<フィギュアスケート:全日本選手権>◇初日◇24日◇長野・ビッグハット

 男子ショートプログラム(SP)で、小塚崇彦(21=トヨタ自動車)が史上初の「父子V」に向けて好発進した。冒頭の3-3回転ジャンプをきれいに決めるなど会心の演技。国際スケート連盟(ISU)公認の今季世界最高を上回る87・91点の高得点をたたき出した。66年大会から男子3連覇した68年グルノーブル五輪代表の父嗣彦氏(64)に続く優勝が見えてきた。織田信成(23)は3位、高橋大輔(24)は4位。今日25日に男子フリーが行われる。

 思わず力がこもった。演技を終えた小塚は、決めポーズのまま右拳をグッと握った。GPファイナルで織田が記録したISU公認の今季SP最高86・59点を上回る高得点。キス&クライで得点を待つ間も、観客席に笑顔を振りまいた。

 小塚

 完ぺき。100点に近い出来。練習でやってきたことを本当に出せたのは今季のSPでは初めて。

 ジャンプだけでなく、ステップとスピンも最高のレベル4を獲得。2位の羽生に約9点の大差をつけた。3連覇した父嗣彦氏に続く初の頂点が見えてきた。全日本選手権では男子の佐藤信夫、女子の佐藤有香が親子優勝した例があるが、「父子V」なら史上初だ。

 生観戦はバンクーバー五輪という嗣彦氏は親子2代制覇の可能性について「僕らは(ジャンプ)2回転半の時代。ケタが違う」と目を細めた。親子げんかはしょっちゅうという。「スケートのことを注文すると『おれはそうは思わない』と反論してくる。独り立ちした証拠なのかな」と成長を認めた。滑りの共通点も親子ならでは。現在小塚を指導する佐藤信夫氏は「スケーティングは親子そのものだ」と証言した。

 課題だった表現力向上の一環として、今季からジャッジの目を見ながら滑るよう心がけている。GPファイナル時にはISU公認ジャッジと話す機会があり「目が合うと0・2点くらいあげたくなる」と言われた。そんな地道な努力もあり、表現力を示す5項目はこの日すべて8点以上の高い得点が並んだ。現時点で3月の東京世界選手権代表は有力視されている。弾みをつける意味でも、全日本の初タイトルを全力でつかみにいく。【大池和幸】