<競泳:日本短水路選手権>◇初日◇26日◇東京辰巳国際水泳場

 五輪2大会連続2冠の北島康介(28=日本コカ・コーラ)が、12年ロンドン五輪に向け、最高のスタートを切った。男子100メートル平泳ぎで、シーズン初めの調整段階ながら最初から積極的に飛ばし、57秒34の日本新をマークし、北京五輪後、国内主要大会で初優勝。末永雄太の従来の日本記録を0秒01上回った。北島の短水路日本新は08年大会の100メートル決勝以来3年ぶり。

 本当に速かった。入水から浮き上がると、北島は25メートルまでの間に頭1つリード。そこから最後までぶっちぎった。「うれしいですね。次につながるレースができた」。国内主要大会では08年6月のジャパンオープン以来の優勝に、日本新のおまけまでついてきた。

 「少し力んだ」午前の予選は、トップの末永と0秒28差で2位通過。57秒62の自己ベストを更新することを目標にした決勝では、選手紹介でガッツポーズを見せるほど気合を入れた。「試合自体を楽しんだし、(日本に)戻ってきてよかった」。

 まだ4月の日本選手権(長水路)に向けた調整段階。1月に南カリフォルニアで行われたヤード単位の短水路大会で2冠。今大会後、3月に米インディアナポリスで今年初めて長水路を泳ぐ。メートル単位の感覚を取り戻すため今大会に出場した。「ここまで順調にきている」。調整とは言いながら、若手の挑戦を王者の貫禄で簡単に退けた。

 それでも満足にはほど遠い。今大会前は徹底的に疲労を自らコントロールするトレーニングを積んだ。スタミナはついているはずだったが「もうちょっと、いい時には疲労感が残らない」と、この日はすべてを出し切った疲れがあった。「もう少し、余力があるレースがしたい」。それが4月に向けての課題だ。

 7月の世界選手権で優勝すれば、12年ロンドン五輪代表が内定する。北島の28歳という年齢を考えれば、五輪1年前に代表が決まるのは、ゆっくり調整できるという点で大きな意味を持つ。しかし、昨年日本選手権3冠の立石、成長著しい冨田と、日本の平泳ぎは世界的にも激戦区だ。「絶対に(世界選手権に)出たい」。五輪に向けた北島の1歩が、最高の形で踏み出した。【吉松忠弘】