<競泳:日本短水路選手権>◇最終日◇27日◇東京辰巳国際水泳場

 五輪2大会連続2冠の北島康介(28=日本コカ・コーラ)が、長水路、短水路合わせて日本新完全制覇で、12年ロンドン五輪に大きく前進した。北島は男子平泳ぎ50メートルを26秒68の日本新で制すると、約2時間後の男子平泳ぎ200メートルでも2分2秒95の日本新をマーク。前日の100メートルと合わせ、今大会日本新3連発で3冠となり、長水路3種目と合わせ、男子平泳ぎ6種目を日本新で完全制覇した。

 この男に、北京五輪後の1年の休養も、昨年の不安の中での復帰も関係なかった。北島は「ここで全てを出そうとは思っていない」という調整段階での日本新完全制覇。「1、2月の練習で、ここまでできるというのは自信がついた」と、五輪王者がついに本気モードに突入した。

 日本新3連発で圧巻の3冠だ。前日の100メートルに続き、この日も50メートル、200メートルともに、スタートから圧倒した。「泳ぐたびに切れが出てきた」と、3種目の決勝で、スタートから誰も北島の前を泳がせない圧勝劇。「良すぎた。この後、怠けないように気を付けないと」と余裕の発言まで飛び出した。

 アテネ、北京の両五輪で100、200メートルの2冠を達成した全盛期も、短水路、長水路ともに、全種目で日本新を保持していた時期が長い。今大会は、あくまでも世界選手権代表がかかる4月の日本選手権(長水路)に向けての準備段階。しかし、完全制覇は世界で戦えるレベルへの指標になる。そこに五輪前シーズンで、ピタリと合わせてきた。

 北京五輪後の休養を経て、昨年、本格的に復帰した。しかし、4月の日本選手権では初めての無冠に終わり、10月のW杯東京大会でも無冠。冨田、立石とライバルが多い激戦区で、国内では勝てない日々が続いたが、この3冠で「日本で戦う怖さみたいなものはなくなった」と、不安も一掃した。

 泳ぎだけではない。用具でもロンドン五輪への準備を着々と進めている。昨年末で、水着を提供していたミズノとの契約を満了。今年は、どことも契約せず「五輪を目標として、いろんな水着を試してみる」。この日も、予選ではスピード社とアシックス社の水着で泳いだ。

 今週に、練習拠点の米国に戻り、3月3日からのインディアナポリスで今季初の長水路に挑む。その後は4月の日本選手権で再び帰国する。「僕の中には(泳ぎに)完成形はない」。28歳にして、まだ進化を続ける怪物が、世界に向けて、高らかに復活を宣言だ。【吉松忠弘】