<フィギュアスケート:世界選手権>◇3日目◇27日◇モスクワ

 【モスクワ=吉松忠弘】世界選手権で自身初メダルを目指す織田信成(24=関大大学院)が81・81点で2位発進した。最初の4回転ジャンプでバランスを崩したが、その後に急きょ連続ジャンプを持ってくるなど挽回。悲願の表彰台に1歩近づいた。日本勢初の2連覇を狙う高橋大輔(25=同)は80・25点で3位。全日本王者の小塚崇彦(22=トヨタ自動車)は77・62点の6位と出遅れた。パトリック・チャン(カナダ)が世界歴代最高の93・02点で首位に立った。

 掲示された得点に思わず目を見張った。「すごい」という言葉が口をついた。81・81点は決して自己ベストではない。だが、織田は素直に喜んだ。「2つもミスして、決勝グループ(6位以内)に残れたらいいかなとしか思っていなかった。そうしたら高い点が出てびっくりした」。世界選手権でSP2位は自己最高位。好スタートを切った。

 巻き返した。最初に予定した連続ジャンプは、1発目の4回転の着氷でバランスを崩して単発になった。ステップでは氷につまずき、よろけた。だが、単発予定だった3回転ルッツに急きょ3回転トーループをつけて、傷口をふさいだ。「(4回転失敗時の)練習はできていた」。昨年の世界選手権は集中力の欠けた演技でシニア最低の50・25点に終わり、フリーにも進めない28位の惨敗を喫した。「リベンジしたい」と雪辱を期したSPで1年かけて、高い集中力を見せた。

 東日本大震災の影響で、開催地が東京からモスクワに変更され、観戦するはずだった家族は来られなかった。23日に行う予定だった結婚式も5月に延期となった。「東京開催だったら奥さんも息子も見に来るはずだったので、少し残念。でも、寂しくないです。スカイプ(ネット電話)で毎日話しているから」。家族にいい演技を-。誓いの滑りを披露した。

 過去4度出場した世界選手権は06年の4位が最高。メダルには1度も縁がない。「食べ物もおいしいし、景色もきれい。世界で一番好きになれそうな町」という初めて訪れたモスクワが、幸運をもたらすか。「フリーの絶対条件は自分のベストの演技をすること。ジャンプを完璧に跳んで、何かをちゃんと伝えられるかが鍵になる」。首位チャンとは11・21点差。奇跡に近い天下取りに、戦国武将の末裔(まつえい)が挑む。