<テニス:ウィンブルドン選手権>◇初日◇20日◇ロンドン、オールイングランドクラブ◇男女シングルス1回戦

 40歳の世界ランク57位クルム伊達公子(エステティックTBC)が、ウィンブルドン史上2番目の年長勝利を挙げた。1回戦で推薦出場の同215位ケイティ・オブライエン(25)に6-0、7-5のストレート勝ち。1996年準々決勝以来15年ぶりの同大会勝利で、68年オープン化(プロ解禁)以降では04年マルチナ・ナブラチロワ(米国)の47歳に次ぐ年長勝利となった。日本女子では大会最年長勝利。2回戦で5度の優勝を誇るV・ウィリアムズ(米国)と対戦する。

 真新しい芝の上で、40歳が勝利に酔いしれた。最後はオブライエンのリターンがネットに。クルム伊達は何度も両手でガッツポーズを繰り出すと、ボールを観客席に打ち込んだ。「本当にうれしい。今日はどんな戦いになっても最後までしがみつこうと思っていた」。あのグラフ(ドイツ)に準決勝で惜敗した96年以来、15年ぶりのウィンブルドンでの勝利だ。

 40歳8カ月は今大会出場選手の中で最年長。68年オープン化以降でも3番目の年長出場で、勝利は47歳のナブラチロワに次ぐ2番目の年長記録になる。会見場に集まった外国の報道陣から「47歳までプレーを続けるのか?」と質問されると「それは不可能。でも、そんなに遠い年じゃない」と冗談も飛び出した。

 25歳のオブライエンを開始から翻弄(ほんろう)した。「パーフェクト」と自ら絶賛した第1セットは6ポイントしか落とさず、6ゲーム連取の17分で締めくくった。第2セットは相手が開き直り、5オールまで競った。しかし、そこから再び2ゲームを連取して決着をつけた。「今日はいかに平常心で戦い切るかがポイントだった。それが最後までできた」。

 今年は大スランプに落ち込んだ。先週の前哨戦まで15大会に出場して4勝15敗。5月の全仏初戦敗退後には「人生の中でこれほどボールを打つ感覚がないのは初めて」と弱気になった。しかし、迷いながら出場した5月下旬からの芝生で行われたツアー下部大会のダブルスに優勝。「それが結果的に(悪いとこを)修正できた」という。

 昨年の全仏から4大大会では5大会連続で初戦からシード選手と対戦する不運な組み合わせにも泣いていた。今年の全仏では初戦で世界1位のウォズニアッキに完敗し、「(運のなさに)あきれて笑ってしまう」と話した。しかし、今大会の初戦は世界215位と、復帰後の初戦では最も世界ランクが低い相手。チャンスをしっかりと勝利につなげた。

 18歳で、89年のウィンブルドンに初出場した。今大会のシングルス本戦に出場する128人中26人が、当時はまだ生まれていない。年長勝利は47歳のナブラチロワには及ばないが、現在は選手の若年化が進み、以前とは比較にならないほど世界ツアーはタフになっている。その中での40歳での勝利は価値が高い。

 2回戦では過去5度の優勝を誇るV・ウィリアムズが相手だ。クルム伊達が引退していた間に台頭した選手で、1度も対戦がない。「想像を超える相手。サーブに触れられるかどうか」。現代のパワーテニスの象徴に、40歳のクルム伊達が初めて挑む。【吉松忠弘】