【ハミルトン(ニュージーランド)15日=益子浩一】日本代表フランカーのマイケル・リーチ(22=東芝)が、大和魂で母国との大一番に臨む。W杯1次リーグ第2戦ニュージーランド戦(16日)に向け、15日は試合会場で非公開調整を行った。15歳で来日し、札幌市内のすし店に下宿しながら日本文化を習得したリーチは「自分の力を出し切りたい」と憧れのオールブラックスに真っ向勝負を誓った。すしを食べて体重が30キロも増した“日本男児”が、故郷との対決で全力を尽くす。

 日本人以上に日本人らしい-。リーチには、そんな言葉がよく似合う。この日の非公開練習後に行われた会見を終えると、コーヒーにたっぷり砂糖とミルクを入れ、緊張を解きほぐすかのように口にふくんだ。オールブラックスは、憧れ続けたチームだ。夢舞台に立つ心境を問われても、あまり言葉が出てこなかった。

 「自分がやるべきことをやるだけっす。チームに貢献できるように。目の前のプレーをするだけっす」

 日本文化を習得するため、15歳で単身来日した。下宿先は、札幌ですし店を営んでいたラグビー部の同僚森山(現リコー)の実家。日本食が好きになり、いつもすしを握ってもらった。当時は身長180センチ、体重が70キロちょっと。札幌山の手高の藤井栄人コーチ(36)は「細くてヒョロっとしていた。体を強くするために『食べろ』と言ったら、吐くまで食べた。練習熱心でいつも雪の中でタイヤを引いて走っていましたね」という。すぐに日本語は習得したが、日本独特の上下関係は慣れなかった。

 勤勉で、情が厚い-。「大和魂」を持った男だ。現在は体重103キロ。すしを食べて30キロも体を太くし、来日後はラグビーの技術もみるみる上達した。

 「どの国の代表になるかを決める時、ニュージーランド代表への憧れも強かった。でも、お世話になった人がたくさんいる、日本代表でやると決めました。W杯で日本を勝たせたい」

 22歳ながら、日本FW陣には欠かせない存在だ。試合会場にはクライストチャーチから家族も駆け付ける。恩人へ、そして家族へ。成長した姿を見せる。

 ◆マイケル・リーチ

 1988年10月7日、ニュージーランド・クライストチャーチ生まれ。セントビーズ高から札幌山の手高へ留学。東海大に進学し、09年度の大学選手権準優勝に貢献した。今春に東芝入り。日本代表は大学2年時の08年11月16日米国戦でデビューし、通算19キャップ(計25得点)。190センチ、103キロ。