【ファンガレイ(ニュージーランド)20日=益子浩一】日本代表のWTB小野沢宏時(33=サントリー)が「最後のW杯」で、20年ぶりの勝利を呼ぶ。今日21日の1次リーグ第3戦トンガ戦に向け、試合会場で非公開調整。唯一、3大会連続出場となる最年長は「これが最後の大会になると思っている」と明かした。集大成となる一戦で、3試合連続の先発が内定。華やかさとは無縁の「月見草」が、日本ラグビー界に91年以来となる歴史的勝利をもたらす。

 ひっそりと咲く月見草には、ふさわしいだろうか。日本ラグビー界の歴史を塗り替える場所は、メーン席とバックスタンド以外は芝生に覆われた片田舎ファンガレイのスタジアムだ。最終調整を終えた小野沢は、視界を確かめるかのように青空を眺めながら深呼吸した。

 最年長のベテランには胸に秘めた思いがある。初めて桜のジャージーを着た01年から丸11年。W杯通算試合数は、トンガ戦で日本の歴代最多を更新する11試合に伸びる。16日ニュージーランド戦では、イングランドのR・アンダーウッドら世界的スターに並ぶ3大会連続トライを達成。数々の記録を打ち立てながら、W杯の勝利だけは無縁だ。

 「ボクはこれが最後の大会だと思って来ていますから。純粋に勝ちたい。最後に勝った20年前は横じまのジャージーですよね。あれを着たことがあるのは、もうボクくらいじゃないかな。もう1度、勝利する集団を見たい。思いは至ってシンプル。ただ勝ちたいです」

 昨季限りで引退した元日本代表WTB大畑大介氏が華やかに咲くヒマワリなら、小野沢は月見草か-。高校、大学と全国大会とは無縁。普段は物腰が低く、誰にも笑顔で振る舞う。日本を背負って戦う戦士というより、出来のいい営業マン。そんなイメージを漂わせる。努力家で「世界レベルでは指1本かかっただけでも倒される。どう抜くかいつも考えている」という。思考力を生かすのは、同じ「月見草」のプロ野球、野村克也氏に通じるところがあるのだろう。

 既に日本は2連敗で、決勝トーナメント進出は絶望的だ。だが、こだわるのは91年大会ジンバブエ戦以来20年ぶりのW杯白星。今大会最北の田舎町で、日本が華麗な花を咲かせる。