<高校ラグビー秋田大会:秋田中央17-15秋田工>◇29日◇決勝◇秋田・八橋運動公園

 秋田中央が、試合終了間際の逆転で秋田工を退け、3年ぶり8度目の花園出場を決めた。8月に海で溺れて亡くなった山内健太郎さん(享年17)の遺影をベンチに掲げ、選手は奮起。「健太郎を花園に連れて行く」という思いで一致団結し、劇的勝利をつかみとった。

 目の前に、花園への道が見えた。後半ロスタイム3分。秋田中央SO冨樫玄(ひかる)主将(3年)が、タックルを外してポスト真下に飛び込む。最後は、腕でねじ込むようにライン上にボールを置いた。15-15。フッカー阿部康平(3年)のゴールキックが決まって勝ち越し。直後にノーサイドの笛が鳴ると、選手は抱き合って歓喜の輪を作った。冨樫は「健太郎が、道(スペース)を作ってくれた。60分間、背中を押してくれました」と、山内さんの遺影を見つめ、大逆転勝利をかみしめた。

 夏の長期合宿を終えた8月15日。正NO8の山内さんが、秋田県内で海水浴中に溺れて姿を消した。一報を聞き付けた3年生は、浜辺にテントを張って山内さんの帰りを待った。だが、翌16日に遺体で発見。「痛いことから逃げないやつ。ムードメーカーだった」(冨樫)。突然の悲報に体調を崩す部員もおり、1カ月は練習がままならなかった。だが、山内さんの練習着をグラウンドに飾り「いつまでも下を向いてもあいつのためにならない。健太郎を花園に連れて行く」と悲しみを乗り越えてきた。

 終盤の同点トライは、山内さんに代わって背番号8をつけた西端紘(3年)の突破が起点だった。フランカーから転向して2カ月。「花園でもあいつの前で負けられない」と誓った。【今井恵太】