<高校ラグビー福島大会:磐城57-14学法福島>◇12日◇決勝◇いわきグリーンフィールド

 磐城が、学法福島に大勝し、3年連続17度目の花園出場を決めた。新人戦は相手のモール戦術に屈したが、この日はフォワードが奮闘。ボールをキープし、バックスの高速展開で9トライを奪った。坂本幸司監督(47)は今大会、ウェールズ人が震災復興募金で使ったTシャツを着用し、支援への感謝の意を表した。「花園では、福島のチームは元気だというのを見せたい」と意気込んだ。

 磐城フィフティーンは顔をベタベタにし、あま~い香りを漂わせていた。優勝時恒例のサイダーかけ。その光景を遠目から見つめた坂本監督は「ヘタクソだけど、気持ちが入って一体感があった。今日は100点だね」と目を細めた。選手の手で宙に舞うと、しわが寄っていた眉間が、フッと緩んだ。

 奇策が奏功した。新人戦で辛酸をなめた相手のモール対策で、控えロックの岡健太郎を左WTBで先発起用。「9人目のフォワード」として今大会初先発の2年生は「フォワードをぶっつぶす」と鼻息を荒くしていたが、前半3分に走り屋としての才能?

 も披露。坂本監督が「苦労人。一番怒られている」という男が先制トライを挙げて、チームが乗らないはずがない。9トライの猛攻で、17度目の花園切符を手にした。

 震災後、部員の約半数が家族の判断で県外へ一時避難。高校日本代表のスタッフだった坂本監督は、ウェールズへの遠征帯同を見送った。だが、約1カ月半後に練習を再開した頃、ウェールズから1枚のTシャツが届く。現地の人々が、募金活動をした時に着用したものだった。坂本監督は「ラグビーできるのか?

 とたくさんのメッセージをもらった」と多方面からの支援への感謝の意を込め、半袖1枚で声をからした。

 花園での勝利は、96年以来遠ざかっている。CTB渡辺慧主将(3年)は「ラグビーは1人でやっているんじゃない。支えられてるんだとあらためて知った。ベスト16が目標」と言い切った。指揮官の「福島のチームは元気でやっているところを見せて、堂々とやりたい」という言葉通り、聖地での勝利が恩返しになると信じている。【今井恵太】