<水球:アジア選手権>◇2日目◇25日◇千葉県国際総合水泳場

 28年ぶりの五輪出場へ、水球の男子日本代表が最高のスタートを切った。初戦のクウェート戦で、フィールド選手11人が得点を挙げるなど22-2で圧勝した。98年から代表入りしている主将の青柳勧(31=ブルボン柏崎)が、チーム最多の4得点を挙げる活躍でけん引した。4カ国の総当たり戦で1位が五輪切符を手にする今大会。84年ロサンゼルス大会以来の五輪に向けて、今日26日にカザフスタンとの大一番を迎える。

 五輪出場を確信した圧勝だった。自分たちの戦術を32分間、徹底できた。勝利の余韻に浸ることなく、冷静に青柳が振り返った。

 青柳

 いつもは相手のペースに合わせてしまうが、今日はスローペースの相手に合わせず、自分たちのリズムで戦えた。手応えがありました。

 水球の攻撃時間は1ターン30秒。相手陣前に10秒でたどり着ければ、残り20秒でセット攻撃に移れる。昨年12月16日から35日間の豪州合宿で磨いてきた速攻。いかに早くゴール前までたどり着くか。それを実行した。第1ピリオド1分すぎの志水の先制点を皮切りに得点を重ねた。青柳は5分過ぎに初得点すると、第3ピリオドの2得点など計4得点。遠めから時速70キロにもなるシュートを決めた。

 青柳は98年に日本代表入り。今回の五輪予選が4度目になる。主将としてチームをまとめ、監督と戦術面も作り上げる。イタリアなど海外にいち早く渡り、強豪チームにも所属した日本水球界のパイオニア。胸囲は120センチ以上。大学時代には長州力にプロレスに誘われたこともある。得意の素潜りでは柄の部分が通常の2倍の2メートルもある特注のモリを手に、75センチのタイなどを一撃で仕留める。水球日本代表の愛称は「ポセイドンジャパン」。モリを手にする青柳の姿はギリシャ神話の“ポセイドン”だ。

 日本戦前にカザフスタンが中国に8-7で勝ち、今日のカザフスタン戦が五輪への大一番になった。昨年は2戦2勝している相手。年齢層も高く、中国戦ではスタミナ切れが目立った。「かなりの確率で勝てます。(こんな好機は)最初で最後。みなさん一緒にロンドンに行きましょう」。自信に満ちた青柳の声が力強く響いた。【阿部健吾】

 ◆青柳勧(あおやぎ・かん)

 1980年(昭55)8月19日、京都府生まれ。小学生で水球を始める。鳥羽高、筑波大、サントアンドリュー(スペイン)などを経てブルボン(日本)に。98年のスロベニア戦で代表初出場。愛称は「皇帝」。185センチ、90キロ

 ◆水球男女代表のロンドンへの道

 男女ともアジア選手権(24~27日)の1位が出場権を獲得する。男子は4カ国(日本、カザフスタン、中国、クウェート)、女子は3カ国(日本、カザフスタン、中国)が総当たり戦で対戦する。男子は2、3位は4月の世界最終予選(カナダ)、女子は2、3位に同月の世界最終予選(イタリア)に回る権利があるが、男女とも勝機がないとみて出場しない。本大会は12カ国が参加し、7月28日~8月12日まで行われる。