<W杯スキー:ジャンプ>◇28日◇札幌・大倉山ジャンプ競技場(HS134メートル、K点120メートル)

 14年ソチ五輪につながる5・5センチ差だ。日本のエース、伊東大貴(26=雪印メグミルク)が、2回合計252・6点で初優勝を果たした。1回目に134メートルで首位に立つと2回目も130メートルを飛び順位を守った。2位のバルダル(ノルウェー)に0・1点差で飛距離にしてわずか5・5センチ差。09年3月の岡部孝信以来、3季ぶり、日本人12人目の勝利が、14年ソチ五輪に向け「お家芸」復活を世界に印象づけた。

 復活ののろしを上げた。伊東は1回目に134メートルでトップに立った2回目。力強く踏み出し、風をつかむと飛距離を伸ばし、130メートルで着地。電光掲示板の一番上にゼッケン「42」がともると、クールな男が激しくガッツポーズを繰り返した。2位のバルダルには5・5センチ差だが、3季ぶり、日本人12人目のW杯Vは、14年ソチ五輪に向け、日本に希望の光をともした。「自分の人生で一番うれしい。今後につながるジャンプだった」と胸を張った。

 札幌のW杯は例年、一線級が回避する傾向にあるが、今季は個人総合トップ10のほとんどが出場した。ハイレベルな一戦で外国勢を抑えた価値は高い。伊東はこれで今季4度目の表彰台に立ち、W杯個人総合も7位に上昇。世界と肩を並べる位置まできた。「自分の自信になった」と手ごたえを口にする。

 98年長野五輪団体金メダルで最高潮に達したお家芸は、その後、長い低迷期に入ったが、昨夏から全日本チームは、スキー板を通常より約10センチ短くして、風の力に頼らずパワー、技術で飛距離を伸ばす練習を取り入れたことも復活につながった。「やり続けた結果だと思う。同じような結果を出せるよう集中していきたい」。自信を備えたエースが、日本をけん引していく。【松末守司】