<競泳:東京都選手権>◇最終日◇29日◇東京・辰巳国際水泳場◇男子200メートル平泳ぎほか

 男子平泳ぎの新星、山口観弘(17=志布志DC)がロンドン五輪代表争いに名乗りをあげた。オープン参加した男子200メートル平泳ぎ予選で、2分10秒82をマーク。タイムの出にくい午前中のレースで、従来の高校記録2分11秒45(高橋幸大)を更新した。苦手のスタートで出遅れたものの、後半に強さを発揮。北島康介を中心とした世界レベルの競り合いを制しての五輪出場に自信を深めた。

 辰巳プールが、午前中から歓声に包まれた。5コースの山口が、大きなストロークで他の選手を引き離した。顔が上がるたびに、2位以下との差が広がる。2分10秒82、目標の9秒台には届かなかったが、自己記録2分11秒50を更新。「手ごたえを感じました。今年最初の大会でベストが出てうれしい」と笑った。

 苦手なスタートで失敗した。しかし、後半の強さは驚異的だった。100メートルの折り返しからゴールまで1分7秒17、これは昨年世界選手権で銀メダルだった北島康介の1分7秒23を上回る。しかも、体が動きにくい午前中のレース、競り合う相手もない独泳でのタイムに「後半速くなったのはよかった。これで1歩前進できたかな」と話した。

 昨年11月に鹿児島から上京し、北島を育てた平井伯昌コーチの指導を仰いだ。「水泳に対する心構えが変わった。積極性が出て、粘り強くなった」という。その粘りが後半のスピードアップにもつながった。平井コーチも「スタートなど、まだまだ足りない。ただ、若さと勢いはある。選考会で頑張らせたい」と五輪を目指す方針を明かした。

 「高校新は目標じゃないので」といいながら「出さないと始まらない」。これで長水路の100、200メートルの中学、高校記録を独占することになる。しかし、目標はロンドン五輪。昨季同種目世界ランク1位の冨田に同3位の北島らライバルは多いが「勝負に徹してロンドンに行きたい。日本で勝てたら、センターポールに日の丸を」と金メダルを宣言した。17歳の新星誕生で、五輪代表選考会を兼ねる4月の日本選手権はさらに熱く、激しくなる。【荻島弘一】

 ◆山口観弘(やまぐち・あきひろ)1994年(平6)9月11日、鹿児島県志布志市生まれ。5歳から志布志DCで水泳を始め、志布志中2年で全中優勝。昨年4月には100メートルで北島康介の持つ高校記録を11年ぶりに塗り替えた。7月の世界ジュニアでは大会記録で100、200メートルの2冠を制した。現在は県立志布志高2年。家族は両親と兄。174センチ、67キロ。

 ◆ロンドン五輪への道

 4月2~8日の日本選手権で2位以内に入り、日本水連の定めた五輪派遣標準記録を突破したものが代表に決まる。山口が狙う200メートルのライバルは、ロンドンで五輪3連覇を狙う北島のほか、昨季世界ランク1位(2分8秒25)の冨田尚弥、同じ2分8秒25のベストを持つ立石諒らがいる。2着は8秒台で争われる可能性が高く、山口は2秒以上タイムを縮める必要がある。