<アマチュアボクシング:全日本女子選手権兼ロンドン五輪予選代表派遣選手選考会>◇3日目◇10日◇広島市中区スポーツセンター

 しずちゃん、いける!

 ミドル級(リミット75キロ)でロンドン五輪出場を目指すお笑いコンビ「南海キャンディーズ」しずちゃんこと山崎静代(33=よしもとクリエイティブエージェンシー)の相手が決まった。同級準決勝は鈴木佐弥子(31=ワールドスポーツ)が3回1分10秒、RSC(レフェリーストップコンテスト)で石井智紋(福山平成大ボクシング部コーチ)に勝利。会場で偵察した山崎は、身長で14センチ上回るだけに今日11日の決勝に自信を見せた。優勝すれば五輪選考会の世界選手権(5月、中国)出場が確実だ。

 白熱するリングを見ながら、しずちゃんからは笑みがこぼれた。国内初試合の相手がそこにいる。武者震いよりも、ワクワク感が表情を緩めた。ノーガードの激しい打ち合いを制したのは、陣営の予想通り鈴木。3回、2度目のスタンディングダウンを奪うと、観客席2列目で「偵察」していた山崎は席を立った。

 「相手に惑わされないで、しっかり自分を持って。(鈴木を)初めて見たので、ああ、あんな感じかなという感じです」。182センチの山崎は鈴木より14センチ高い。「測ったことない」というリーチ差も明白だ。身体的優位は動かない上、ボクシング歴2年の鈴木はこの日が初試合だった。練習の成果を出せば、勝てる確率は十分にある。

 梅津トレーナーは大会開催地にひっかけて「カープ打線」に例えた。水泳で五輪を目指した対戦相手を巨人に例え「鈴木さんは高い運動能力がある。山崎は運動の貯金もないし不器用。だから、4倍の練習をしてきた。黄金の巨人に広島が勝つと気持ちいいでしょ?」。この日昼には広島城で1時間の最終調整。試合へ向けた不安を聞く声に、山崎は「ないですね」と即答した。流した汗はウソつかない。魂込めた拳を打ち抜く時がやってきた。【近間康隆】