<柔道:全日本女子選手権>◇15日◇横浜文化体育館

 決着は、最悪の形で最終選考会に持ち越された。日本一を決める大会で、ロンドン五輪78キロ超級代表候補の2人が、直接対決することもなく優勝を逃した。2連覇を狙った世界ランク4位の杉本美香(27=コマツ)が決勝で、同1位の田知本愛(23=ALSOK)は準々決勝でともに、五輪出場資格がない山部佳苗(21)に敗戦。女子日本代表の園田隆二監督(38)はふがいない試合内容の2人に「評価できない」と、厳しく叱責(しっせき)した。

 ため息しか出なかった。園田監督は開口一番「あぁ、頭が痛い」と嘆いた。杉本と田知本。期待した2人の五輪代表候補が、日本一に届くことなく敗れた。杉本は準優勝、田知本は8強と差はあるが「同じ相手に負けているので全く関係ない。マイナスはあってもプラスはない。本当に五輪に出たいのか」とバッサリ切り捨てた。代表選考は5月の選抜体重別(福岡)へ、最悪の形で持ち越された。

 選考の重圧を受ける2人と、無関係なほかの選手。その差は、動きの硬さに表れた。先に散ったのは田知本。準々決勝で、苦手意識のある山部に慎重になった。技が出せず旗判定にもつれ、1-2で敗戦。「自分自身に負けた。杉本さんと戦うところまで行けなくて、悔しい」とうなだれた。

 直後、杉本も硬くなった。準決勝は判定で乗り越えたが、決勝は山部の気迫に押された。指導を受けた後の2分27秒、豪快な体落としで技ありを食らった。「田知本が負けたことが影響したのかも」とコマツの松岡監督。杉本は「勝ちたい気持ちが空回りした。このままじゃ代表に選んでもらえない。選ばれても、五輪では絶対勝てない」と下を向いた。

 全日本の成績を重視し、優勝者が五輪に大きく近づくはずだった。吉村強化委員長は「2人とも五輪候補の自覚が足りん」と一喝。園田監督は「(超級は)最悪、五輪に出さない。なら負けないから」と自嘲気味に話した。五輪金メダルへ最大の敵は世界女王の■文(中国)。ここでつまずいていては、先は見えない。「本当に一からやります」と杉本。真価は、1カ月後に問われる。【今村健人】※■は人べんに冬の2点がニスイ