【サンノゼ(米カリフォルニア州)26日(日本時間27日)=千歳香奈子通信員】陸上男子ハンマー投げの室伏広治(37=ミズノ)が、2大会ぶりの五輪金メダルへ「絶頂」を宣言した。練習拠点のサンノゼシティー大学で約1時間半の練習を公開。その後は教室へ移動し、五輪への取り組みを講義した。昨年の世界選手権に続く金メダルが期待されるベテランは「今までで一番充実している」と自信満々。41歳まで現役だった父重信氏を引きあいに「やり方次第ではチャレンジできる」と、16年リオ五輪まで競技続行の考えも明かした。

 温暖なカリフォルニアの日差しを体いっぱいに受け、鉄人は心地よさそうにハンマーを投げた。緑豊かな大学の投てき場に12回、風を切る音が響いた。練習中の室伏は終始、穏やかな表情を崩さなかった。

 室伏

 コンスタントに80メートルを投げ続けることができれば、メダルは近いと思う。長く競技を続けてくるといろいろなことが分かってくるし、楽しいことも、より深く競技を理解できるようになった。ロンドンで投げられるのはうれしいしワクワクする。今までの中で一番充実している。

 37歳の鉄人から「絶頂宣言」が飛び出した。今や練習の大半は体幹メニュー。実際に投げる時間はわずか20分ほどだ。足、腰、ひざまわりをほぐして強化することが狙いという。公開練習後は、構内の教室に移動し、中京大スポーツ科学部准教授の肩書を持つ「室伏先生」は教壇に立った。トレーニングの意図を約30人のメディアに向けて講義。1週間かけてつくったという資料をモニターに映し出し、五輪への取り組み方を自ら熱心に説明した。

 20代のような瞬発力はない。だが旺盛な探求心と創意工夫で進化し続ける。グスタフソン・コーチは「この練習に切り替えて3年になるが、3年では習得できるものでなく、8年はかかる。13年のモスクワ(世界選手権)、16年リオがベストなタイミングだと思う」。ロンドン五輪を集大成と見る向きがあったが、完全否定した。さらに室伏も、父重信氏を引きあいに「現役続行」をほのめかした。

 室伏

 鉄人の血を引いていますから。そのステップを踏んでいる。父は41歳まで競技を続けましたから。(16年リオは)ロンドンが終わってから考えようと思う。やり方次第ではチャレンジできると思います。

 6月の日本選手権で一時帰国する以外は、静かで温暖なサンノゼに腰を据えて調整。「カリフォルニアは相性がよく、のんびり自分のペースでトレーニングできている」。あと3カ月。泰然自若として、室伏はロンドンへ向かう。<室伏過去の五輪VTR>

 ◆00年シドニー

 予選1投目に78メートル49を投げ、通過ラインの77メートル50を一発クリア。全体3番目となったが、決勝は自身の日本記録に遠く及ばぬ76メートル60の9位。入賞も逃した。

 ◆04年アテネ

 3投目に83メートル19センチを記録したアヌシュ(ハンガリー)に対し、室伏は4投目に82メートル35、最終6投目に82メートル91。わずか28センチ及ばず銀メダルとなったが、アヌシュのドーピング違反が発覚し、室伏が繰り上がり優勝。大会から1カ月を経て金メダルが授与された。

 ◆08年北京

 大会直前に腰を痛めながら強行出場。2投目に80メートル71をマークしたが、全6投で80メートル超えはこの1投だけで5位に終わった。優勝はコズムス(スロベニア)で記録は82メートル02だった。