<ホッケー:ロンドン五輪世界最終予選・日本5-1アゼルバイジャン>◇11日目◇5日◇女子決勝◇岐阜県グリーンスタジアム

 「さくらジャパン」が3大会連続の五輪出場を決めた。世界ランク9位の日本女子は、同15位アゼルバイジャンに快勝。前半8分、MF駒沢李佳(29=コカ・コーラウエスト)の先制点など、前半だけで4点を奪った。安田善治郎監督(65)が掲げる「ランニングホッケー」を大一番で体現。相撲の四股をトレーニングに取り入れるなどして下半身を鍛え上げ、ロンドンでは「最低6位」を目指す。44年ぶりの五輪を狙う日本男子は、今日6日の南アフリカ戦に初の「アベック出場」を懸ける。

 咲くべき「さくら」は、しっかりと咲いた。日本が順当に3大会連続の五輪出場を決めた。65歳安田監督の上ずった声が、澄み切った岐阜の青空に響く。「ベリー、ハッピーです!

 今日はよく走りました」。5勝1分け、28得点でわずか2失点。圧倒的な力を見せて、最終12枚目のロンドン切符を手にした。

 豊富な運動量で、強豪韓国出身選手を6人抱える難敵を支配した。前半8分に“さくらジャパンのウッチー”こと、サッカー日本代表DF内田似のMF駒沢が「気持ちで戦った」と必死に右手を伸ばした。タッチシュートで先制。同21分と25分には、24歳FW柴田が倒れ込みながら得点した。数的優位になってゴール前へ飛び込むと、ボールへの執念も上回って序盤で試合を決めた。

 まさに安田ホッケーの神髄だった。決戦が始まってすぐ、指揮官は感じた。「走って動けば負けない。プレッシャーがかかる中、前半で大丈夫だと。攻撃こそ最大の防御。機先を制して先手必勝です」。04年アテネ大会で五輪初出場に導いた指揮官が、08年北京五輪後に再登板。「走れない選手は使わない」と徹底して下半身を鍛えた。

 坂道ダッシュやインターバル走、水泳や腕立てなどに加え、トレーニングメニューには相撲の「四股」を取り入れた。MF山本主将は「お互いにフォームをチェックしながら」と、時には100回も両足を上げ下げした。「ガッツリやって腰回りが安定しました。筋肉がつきやすいんですよね…」。恥ずかしそうに両足を隠した山本主将だが、ムキムキになった大和なでしこの足が世界で戦う武器になる。

 貧乏ぶりが話題になったアテネ五輪から、経済的状況は変わらない。交通費などの自己負担が重荷となり、代表を辞退する選手もいる。そんな中、泣きながら練習に耐えて戦い続けた18人。山本主将は「ここは通過点」と強調する。「五輪も3度目。目標は現実的に6位ですけど…」と言葉をのみ込んだ。メダルも視野に、満開宣言は真夏のロンドンで。華麗でたくましい「さくらジャパン」は、年に2度咲くことができるから。【近間康隆】

 ◆ホッケー女子のロンドン五輪

 出場は12カ国。6カ国を2組に分けて総当たりのリーグ戦を行い、上位2カ国が準決勝へ進む。既に1次リーグの組み分けは行われており、日本は開催国英国と欧州王者のオランダ、中国、韓国、ベルギーと同組になった。現在は世界ランク1位のオランダが頭1つ抜けた状態。10年W杯で優勝した同2位アルゼンチンや同3位ドイツ、同4位英国が「4強」を形成。