主将と旗手が決まらない-7月27日のロンドン五輪開幕まで残り50日を切ったが、日本代表選手団の主将と旗手が決まらず、日本オリンピック委員会(JOC)は頭を抱えている。今五輪は、日本が五輪に初参加した1912年ストックホルム大会からちょうど100周年に当たり、JOCは主将と旗手の結団式、開会式、閉会式すべての行事への出席を熱望している。しかし、選手側は直前合宿の競技日程と折り合いがつかず、人選が混迷している。

 ロンドン五輪まで、そろそろ1カ月。日本選手団の支柱である主将、日の丸を掲げる旗手の人選が混迷し、さすがにJOCも焦りを隠せない。JOC関係者によると、都内で行われた12日の理事会で発表予定だった。しかし、それも延期になった。

 原因は、候補と考えられる代表選手と、各行事の日程が折り合いがつかないことにある。主将、旗手ともに、7月22日の結団式(東京)、27日の開会式、8月12日の閉会式すべてに出席するとすれば、拘束期間が長くなってしまう。特に主将は、他の選手への激励という意味もあり、その任は重い。

 競泳は7月28日開幕の8月4日閉幕、陸上は8月3日開幕で12日閉幕と、五輪開催期間約2週間続けて行われる競技はほとんどない。選手はコンディションを考え、現地に早く入ったり、遅く入ったりさまざまだ。たとえば大物では、競泳の北島康介は拠点の米国から直接、英国入り予定。体操の内村航平も12日からフランスで合宿予定で、結団式に日本にいない。投てきの室伏広治は陸上の開幕日が遅いため、開会式以降に現地入り予定だ。

 また、主将、旗手ともに誰でもいいというわけにもいかない。ともに日本スポーツ界の顔と言われる選手が歴代、務めてきた名誉ある役目。この数年は、女子選手の数も増えてきたこともあり、88年ソウル大会以降は、00年シドニー大会をのぞいて、主将は男子、旗手は女子というのが続いている。これだけ限定された条件となると、適合する選手は皆無に近い。

 主将にまつわる嫌なジンクスもある。92年バルセロナ大会の主将で柔道の古賀稔彦が金メダルを獲得して以降は、主将のメダル候補が次々と早期敗退を繰り返した。アテネの井上康生は敗者復活戦敗退、前回の北京の鈴木桂治は初戦敗退だ。とにかく、日本を代表するアスリートの名誉ある役目。何とか選手に快諾してもらうことが最大の願いだ。【吉松忠弘】

 ◆五輪選手団の主将と旗手

 日本が主将と旗手を決めたのは28年アムステルダム大会から。「日本の顔」として競技実績や知名度が重視され、人気競技の選手が務めることが多い。開閉会式はもちろん、あらゆる公式行事に参加するため、負担は相当なもの。競技成績にも影響し、特に夏季大会の主将はここ4大会メダルを逃している。それ以前の古賀、斉藤、山下の柔道勢もケガに苦しんだ。88年大会からは00年シドニー大会を除いて男子が主将、女子が旗手が恒例。しかし、期待された金メダルを獲得した女子旗手はいない。