<フィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル>◇初日◇7日◇ロシア・ソチ

 4年ぶり3度目の優勝を狙う浅田真央(22=中京大)が、14年ソチ五輪の“前哨戦”で首位発進を決めた。腰痛の不安もあるなかで、好感触のリンクで軽快な演技を披露して66・96点をマークした。今日8日のフリーでは、日本選手初のGPシリーズ3連勝、さらに自身初の国際大会3連勝に挑む。

 氷をとらえるスケート靴のブレード(刃)の感覚、場内の照明の感覚、浅田にとっては五輪リンクの全てが追い風になった。

 浅田

 最初に氷に乗ったときに、ちょっと違うなと思うと慣れるまで時間がかかるんですけど、それが今回はなかった。明るすぎてもまぶしいので嫌だなって思うんですけど(それもなかった)。今日は自分のやるべきことをしっかりできました。

 実際に試合で滑ってみなければわからない繊細な要素。2分40秒をかけて、しっかりとそれを確かめた浅田は、最後まで晴れやかな笑顔をソチの観客に届けていた。

 ジャズのスタンダードナンバー「アイ・ガット・リズム」のピアノ音に乗り、滑り始める。目立っていたジャンプの回転不足もなし。従来は沈み込んで反動をつけて跳んでいたが、「力が分散しないように反動をなくすようにしてきた」という。上方に跳び過ぎず、回転の開始を早めることで軸を安定させた。「ここ2年くらいずっと練習してきて、自分のものになってきている」。3度のジャンプは全て加点をもらった。

 体調管理への意識も高まっている。NHK杯を終えた翌日の先月26日。浅田は佐藤信夫コーチに「2日間お休みをください」と願い出た。自分から休養を願い出るのは初めてだった。それもシーズン中に連休をするのは極めてまれだった。

 もともと練習の虫。佐藤久美子コーチは「休みなさいといっても、まったく休まない子。連休をするくらいでちょうどいいんです」という。22歳といえど、フィギュア界では年長。疲れがたまっていた体を見つめ、調整ペースを変えた。特に今大会は腰痛を抱え、スピン練習なども自粛していた。その判断がなければ、さらに大きな影響があったかもしれなかった。

 NHK杯では優勝したが、フリーではジャンプを4回失敗。悔いを晴らす機会は、今日やってくる。「今日のように全てのエレメンツをしっかりと。最後までスピードを落とさずに、力強く滑ることを目標にやりたい」と静かに燃える。

 昨年大会は、母匡子(きょうこ)さんの体調急変で、カナダから緊急帰国した。9日、一周忌を迎える。悲しみの別れから365日。五輪会場での重要な決戦は、1年後の最高の笑顔を、最愛の人に届ける戦いにもなる。【阿部健吾】