ビーチバレー界のアイドルで、一世を風靡(ふうび)した浅尾美和(26=エスワン)が12日、都内で会見を開き、現役からの引退を発表した。ロンドン五輪出場を逃し、次の目標の国内ツアーの年間チャンピオンもかなわず、「気持ちがぷつりと切れてしまいました」と、引退の理由を挙げた。また、交際中の男性がいることも初告白。現在、予定はないが、将来の結婚もにおわせた。今後は選手ではなく、ビーチの普及の顔として活動していく予定だ。

 アイドルがついに去る時が来た。浅尾は、ぴしっとした黒のスーツを身にまとい、ゆっくりと言葉を絞り出した。「わたし、浅尾美和は…」。言葉が続かなかった。既に涙が浮かんだ。ハンカチで目頭を拭く。「今シーズンをもちまして引退をさせていただくことになりました」。必死でこらえても、惜別の涙は、絶え間なく流れ落ちた。

 08年北京五輪出場を逃し、今年のロンドン五輪に目標を絞った。しかし出場を逃すと、国内ツアーの年間チャンピオンを狙った。9月のグランドスラム福井大会で優勝すれば、その可能性は残ったが、また準優勝。「わたしなりに努力してきたが、勝てる選手ではないのかなと認めざるを得なかった」。現役につなぎ留めていた糸が、その瞬間、音を立てて切れた。

 人気とは裏腹に、国内ツアーでは1度も優勝できなかった。そのギャップに、一時は笑顔も消えたことがある。「1度は引退も考えた」。ツアー以外では2度の優勝がある。「チームがひとつになって、ファンとも一丸となったと感じた瞬間」と、その優勝が最高の思い出となった。

 この日、自ら、交際相手がいることも初めて告白した。30代半ばの一般男性で、付き合い始めて1年ほどになる。結婚もうわさされるが「わたしにとって大切だと思う人はいるが、そういう風になる時は、きちんと報告したい」と、将来の幸せをにおわせた。

 今後は「ビーチが大好きなので、楽しさを分かってもらいたい」と、普及を中心に活動していく。所属事務所の曽根社長によると「キャスターなどにはならない」という。国内ツアーも、男子で引退した朝日健太郎とともに、浅尾を広報大使として考えているという。ビーチに転向して8年。日本ビーチ界のひとつの時代が終わった。【吉松忠弘】

 ◆浅尾美和(あさお・みわ)1986年(昭61)2月2日、三重県鈴鹿市生まれ。三重県立津商高時代にインドアバレーで2度の春高出場。卒業後、川合俊一氏のスカウトでビーチに転向した。その美貌と水着のお色気で、人気が沸騰。盗撮騒ぎが起きるなど、一躍、ビーチ界のアイドルとなった。しかし、国内ツアーでは7度の準優勝が最高成績。ツアーではないが、08年全日本女子と09年ビーチバレージャパンの2度の優勝がある。172センチ、53キロ。