<レスリング:全日本選手権>◇初日◇21日◇代々木第2体育館

 アマとプロの融合が、16年リオデジャネイロ五輪でメダルをもたらす。フリースタイル男子96キロ級で、新日本プロレスの親会社であるブシロード所属の山口剛(23)が初優勝を遂げた。山口は、ブシロードが9月に立ち上げたアマチュアレスリングクラブの所属第1号選手。プロレスの後押しで、リオでの金メダル獲得に名乗りを上げた。

 山口が、鮮烈な初優勝だ。ブシロード所属選手としてのデビュー戦で、いきなりの全日本王者。決勝では、中学まで習っていた柔道仕込みの内股すかしで相手を倒すと、そのままフォール勝ちに持ち込んだ。「重圧はあったけど、結果が出てうれしい」。クラブの監督で、新日の永田裕志流の敬礼で初優勝を祝った。

 今年6月の全日本選抜で、永田から「君いいね」とスカウトされた。「所属がなかったので感謝の気持ちでいっぱい」。現在、早大の5年生。就職口が見つからずに留年した。所属もなく、今大会で結果が出なかったら「引退しようと思っていた」。それが永田のひと声で一転した。

 84キロ級でロンドン五輪を目指した。しかし、夢破れ、10月の岐阜国体から96キロ級に転向。優勝して、今大会に弾みをつけた。永田監督も「まだまだ(筋肉が)つく身体。骨格もすごい」と階級変更を後押し。「磨けば磨くほど光るものがある」と大絶賛だ。

 目標は「大げさかもしれないけど、リオでの金メダル」(永田監督)。山口も「日本の重量級は強いと証明したい」と意気込む。強化策も「他の団体に行かせて強さを見せつける」と、まさに道場破り。8月からは、新日のプロ道場のトレーニングにも参加しており、永田監督は「将来はプロレスに」と期待を込めた。【吉松忠弘】

 ◆山口剛(やまぐち・たけし)1989年(平元)4月4日、岐阜・中津川市生まれ。中津商高から本格的にレスリングを始め、高校4冠を達成。早大に進学後は、4年で主将を務めた。11年全日本学生84キロ級優勝。同年全日本同級3位。179センチ。