<フィギュアスケート:全日本選手権>◇男子フリー◇22日◇札幌・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

 羽生結弦(18=東北高)が「日本一の高校生」になった。SP1位から、フリー2位の187・55点で合計285・23点。国際スケート連盟(ISU)の公認記録とはならないが、世界歴代最高得点を上回る初優勝で、97年の田村岳斗以来15大会ぶりの高校生王者となった。高橋大輔(26)は国内最高の192・36点で、合計280・40点の2位。2人が14年ソチ五輪の出場枠がかかる来年3月の世界選手権(カナダ)出場を確実にした。

 高校3年生は演技後も軽やかに跳んだ。5度目の出場で初めて上がる表彰台の真ん中。一番高いその座へ、羽生は両足ジャンプで、ヒョイと跳躍した。

 羽生

 初めて1位の台に乗ったので、興奮してジャンプしちゃいました。

 そんな無邪気さに、氷上での力強さを兼ね備えた高校生チャンプが誕生した瞬間だった。

 滑走順は最終。5人前の高橋が国内最高点で会場を興奮に陥れる間も、自分への集中を高めた。耳にはイヤホン。外の情報を遮断して、襲う緊張感と闘っていた。「得点のことは全然知らなかった。自分ができることをやろうと」。

 勝負は冒頭の4回転ジャンプの2本目、サルコーだった。着氷が乱れたが、なんとか尻もちをつかず、踏ん張った。完璧ではなかったが「目標は達成できた」。持ちこたえた余分な力が体力を奪い、後半の5連続ジャンプの軸がぶれることもあったが、転倒はしない。体力面の課題を挙げていたフリーで、見事に期待に応えてみせた。

 羽生が日本一を意識したのは小学生のころ。地元仙台のリンクだった。同じ練習グループにいたのは、トリノ五輪金メダルの荒川静香と鈴木明子。マッシュルームカットの小さな少年は、大きなお姉さんと滑る中で、日本のトップの技術を体感していた。小2から5年間指導した都築章一郎コーチ(74)は「英才教育でしたね。その時からかなりレベルの高いことを要求した。『世界一になるんだ』としょっちゅう言いましたよ」と懐かしむ。当時は5分も練習を続けられない子。野球のほうが好きで、目を離せばリンク外で球を投げていたという。だが、荒川らと滑って意識も変わり、才能は開花していった。

 それから約10年。テレビで見ていた高橋、織田、小塚ら先駆者たちを超えて、ついに頂点に立った。

 羽生

 日本男子のすごい強いなかで真ん中に立って信じられないが、だからこそ、また胸を張ってここに立てるようにしたい。

 演技の自己評価は50%。伸び盛りの18歳に限界は見えない。次は世界の頂へ、軽やかに跳んでみせる。【阿部健吾】

 ◆高橋と羽生の得点

 フリーで高橋が192・36点、羽生も187・55点と、どちらも高得点をたたき出した。世界最高得点は11年世界選手権でチャン(カナダ)が出した187・96点。全日本選手権は国際スケート連盟公認大会ではないため「参考記録」扱いだが、ハイレベルな争いだった。合計点も羽生の285・23点は、同大会のチャンが持つ世界最高280・98点を上回った。