競泳男子平泳ぎの北島康介(30=日本コカ・コーラ)が「金メダルタッグ」を再結成した。4日、都内で練習を公開。米国から日本に拠点を戻し、08年北京五輪前以来、約5年ぶりに日本代表・平井伯昌ヘッドコーチ(49)に師事することを明かした。「平井先生のところで(現役を)終えたい」と、アテネ、北京と2大会連続金メダルに導いた恩師のもとで、有終の美を飾る決意をみせた。

 北島は子供のように無邪気だった。公開練習中、普段以上に笑顔を絶やさなかった。プールサイドには五輪2大会連続金メダルに導いてくれた平井コーチの姿がある。中学から師事した恩師。「新鮮な気持ちでした」と話す。記録が伸び続けた当時を思い出すかのように泳いだ。

 08年北京五輪で2大会連続2冠の偉業達成後、コンビを解消し、米国に拠点を移した。個人では無冠だったロンドン五輪後、現役続行を決断。「水泳人生の最後の締めくくりは、平井先生に指導してもらって終えたい」と約5年ぶりに師事することを決めた。

 残りの水泳人生が長くはないことは分かっている。「水泳を楽しんで、この1年を最後と思って、世界中の大会に出たい」。かつてのようにメダル、世界新記録をしゃにむに狙いに行くわけではない。秋には生まれ育った東京の国体に出たり、小さな国際大会で世界を回る希望もある。

 水泳人生を完全燃焼するためにも、恩師のもとが万全だった。現在、寺川、松田らメダリストのベテランも師事し、平泳ぎの世界記録保持者山口、萩野、瀬戸の「高3トリオ」の若手もそろう。「みんなから刺激をもらうし、平井コーチから指導をあおぐことで、新しいことも見えてくると思う」と続けた。

 再起戦の日本選手権(4月11日開幕、新潟・長岡)は50メートルの1種目に全力を注ぐ。「やりますよ、2カ月間。面白いものを見せられるように。“平井マジック”頼むみたいな」。再び愛弟子とタッグを組む平井コーチは「ちょっと良くなると“よっしゃ”と無邪気に喜ぶ。それもあいつの強み。死に水をとるのはオレか」。約5年ぶりの「再会」は必然だった。【田口潤】

 ◆平井クラブ(仮称)

 4月から東洋大准教授に就任する日本代表の平井ヘッドコーチが、社会人選手の受け皿として立ち上げるクラブチーム。メンバーは背泳ぎの寺川綾、バタフライの松田丈志らの五輪出場組。今春、東洋大に進学する個人メドレーの萩野公介と平泳ぎの山口観弘、さらに早大へ進む瀬戸大也も参加する方向だ。場所は東洋大のプール、隣接する国立スポーツ科学センターやナショナルトレーニングセンターも活用予定。