女子柔道界が、抜本的な改革に乗り出す。全日本柔道連盟(全柔連)は5日、東京・文京区の講道館で緊急理事会を開き、女子選手への暴力行為、ハラスメントについて協議。厳しい意見が噴出する中、外部有識者による第三者委員会の設置、女子選手支援体制の強化などが決まった。さらに女性理事登用、女性監督起用も視野に改革を進めることを確認。選手15人の告発で、女子柔道を取り巻く環境が劇的に変わろうとしている。

 午後3時から始まった緊急理事会、理事たちの厳しい表情が事の重大さを表していた。「強化だけではない。柔道界全体の問題。理事全員が辞職するぐらいの気持ちでないとだめだ」。1人の理事が語気を強めて言った。異例の選手告発で明らかになった柔道界始まって以来の大事件。小野沢専務理事の経緯説明に、重苦しい空気が流れた。

 理事会前に強化担当の吉村理事と徳野代表コーチが相次いで辞任。園田前監督を含めて3人が持ち場を離れた。しかし、告発した選手の願いは「指導陣の入れ替え」だけではない。強化体制とシステムの見直し、さらに女子の待遇改善。そのための意見が次々と出た。

 上村会長は理事会後の会見で「外部有識者による第三者委員会の設置」「女子強化選手支援ステーションの充実」をまず挙げた。この日は第三者委員会設置のための準備委員会を立ち上げ、人選に着手。3月18日の理事会までに改革案の提出を求めるという。支援ステーションは現在のものを強化。弁護士などに依頼して悩みを持つ選手からのホットラインを開設することも検討される。さらに、問題視されることが多い代表選手選考についても検討するプロジェクトを立ち上げる可能性があるという。

 まだ競技の歴史が浅い女子だが、柔道界の中での待遇も改善する。上村会長は「女性理事の登用も視野に入れたい」。過去、女性理事は0だから、実現すれば初となる。また、代表監督にも「女性監督も考えたい」と上村氏。2月の欧州遠征は田辺勝コーチが代行として指揮をとるが、後任に関しては「白紙の状態。選手からの声があれば、女性もある。いい方がいれば、ぜひお願いしたい」と、初の女性監督誕生に前向きだった。

 もちろん、改革は始まったばかり。まだ何も形になっていない。有識者による委員会からの「改革案」がどこまで実現できるのか。女子選手の環境がどう変わるのか。それでも、15人の告発が旧態依然とした日本柔道界を変えるきっかけになったのは間違いない。【荻島弘一】