パワハラ、不正な金銭徴収問題で揺れる全日本柔道連盟(全柔連)が、現体制のまま改革を進めることを確認した。全柔連は18日、東京・文京区の講道館で理事会を開催。佐藤宣践副会長(69)が執行部総辞職案を出したが、上村春樹会長(62)の「今は全員一丸で難局にあたるとき」という考えの前に否認された。理事会では第三者委員会の答申を具体化するための検討プロジェクト設置も決定した。

 佐藤副会長の「執行部刷新案」は、不発だった。理事会前に行われた執行部会で提案したが、上村会長の「改革優先案」が藤田副会長、小野沢専務理事に支持され、1対3と劣勢。正午から食事をとりながらの会合は、予定通り1時間半で終了した。理事会でも、佐藤氏は「執行部の責任は重い」と自らも含めた総辞職を口にしたが、賛同者はなし。採決にも至らず、わずか10分で佐藤案は消えた。

 佐藤氏が事前に「人事刷新」を公言したこともあって、講道館には朝から多くの記者やテレビカメラが集まった。会議は3時間にも及んだが、結果は「上村体制変わらず」。トップに引責辞任を求めた佐藤氏の声は届かず、逆にある理事は「佐藤さんの方が危ないんじゃないの」と、メディアを通じて人事刷新を叫んだ同氏を批判した。

 理事会の冒頭、嘉納行光名誉会長(80)が「大変な時期だからこそ、一枚岩でやっていきましょう」と呼びかけた。柔道界の象徴ともいえる講道館名誉会長の言葉で、会の流れは決まってしまった。佐藤氏は「みんな、本音と建前は違うからね」と同調者がいなかったことを残念がりながらも「理事会の決定を守るのが我々の義務」と、身を引く決意を翻して言った。

 理事会では、まず第三者委員会が改革案のトップにあげた「暴力・暴言根絶宣言」をした。報告書をもとに、改革提言を具体化するための検討プロジェクトを発足した。6月の理事会までに5項目の提言に対する改革推進体制を定める。

 しかし、執行部の責任を問う声が消えるわけではない。理事会後の会見でも上村会長に対して「今の体制で大丈夫か」「会長としての責任は?」と厳しい質問が飛んだ。指導者への助成金を強化委員会が留保していた問題について、小野沢専務理事は「裏金ではないという認識」と話したが、誰もが納得できる説明はできず「調査の結果を待つ」と歯切れが悪かった。

 今日19日には日本オリンピック委員会(JOC)理事会で全柔連に対する処分が決まる。改革への提言もされる予定。これを受けて26日には臨時理事会を開くことも決まった。「このメンバーで改革していくことを全員で確認した」と上村会長。現体制での改革はスタートを切ったが、苦難の道はまだまだ続きそうだ。