<全日本実業団対抗柔道>◇15日◇岡山・桃太郎アリーナ

 92年バルセロナ五輪柔道男子78キロ金メダリストの吉田秀彦(43)が、11年ぶりに“現役復帰”した。男子3部の団体戦に、監督を務めるパーク24の副将として出場。決勝までの6試合で得意の内股を決めるなど一本勝ち4度を含む5勝1分けと活躍し、準優勝に貢献した。今後については「チャンスがあれば、試合にも出てみたい」と前向き。柔道界の明るい話題作りに、一役買った。

 吉田が11年ぶりに実戦の畳に上がった。「今回は人が足りないので」と監督を務めるパーク24の3部団体メンバーに自身を選手登録。副将として、1回戦から出場した。

 2回戦では、相手の奥襟をがっちりとつかみ、積極的に仕掛けた。2分12秒で自身の得意技、内股を見事に決めた。現役時代をほうふつとさせる豪快な一本に、観客も沸いた。旭化成との決勝では、73キロ級強化選手の斎藤涼と対戦。「畳の上で足がしびれていた」と言うほど疲労もピークに達したが、攻め続けた。残り21秒で相手に2つ目の指導。そのまま逃げ切り、優勢勝ちを収めた。

 6試合を戦い抜き、吉田は「あー、疲れた」とつぶやいた。実戦復帰に「昔は余裕だったんですけど。こんなに柔道が疲れるのかと」と笑わせた。それでも選手として監督として、準優勝に貢献し、表彰式では優秀選手にも選出された。

 今後も監督と選手を兼業したい思いはある。「ケガもあるんで、練習しながら。またチャンスがあれば」と話した。一方で年齢やケガなど課題は少なくない。その上で、優勝経験のない全日本選手権への挑戦にも含みを持たせた。「目指すとなると本当に必死こかなきゃいけない。もっともっと練習しないと」。その目は真剣だ。

 「『盛り上げろ』って言うなら(全日本に)出ますけど」。そう話すと、豪快に笑った。騒動が続く柔道界に話題をもたらすことも“現役復帰”した理由の1つ。「僕だけじゃなくて、他の選手にも盛り上げてほしい」と柔道界の未来を担う若手選手にも呼び掛けた。今日16日は、1部と2部に出場する同チームの監督業に専念する。【鈴木絢子】

 ◆吉田秀彦(よしだ・ひでひこ)1969年(昭44)9月3日、愛知県大府市生まれ。小4で柔道を始め、世田谷学園高-明大-新日鉄。92年バルセロナ五輪柔道男子78キロ級金メダル。96年アトランタ、00年シドニー両五輪出場。97年2月に明大監督就任後、02年に辞任し、プロ柔道家に転向。総合格闘技18戦10勝7敗1分けの成績を残し、10年4月25日に現役引退。11年5月に実業団「パーク24」の監督に就任し、柔道界に復帰。180センチ、105キロ。