全日本柔道連盟(全柔連)の上村春樹会長(62)が2日、背任罪で告発された。元衆議院議員の本村賢太郎氏(43)らがこの日、東京地方検察庁に上村会長と全柔連の吉村和郎前強化委員長(61)に対する告発状を提出した。公金である強化助成金を不正受給し、さらに強化留保金として不正に使用したことを追及したもので、受理されれば上村会長と吉村氏の責任が司直の手で問われることになる。

 東京地検に告発状を提出した本村氏は、厳しい表情で言った。「柔道界のイメージは最悪。根源は上村会長と吉村前強化委員長にある」。告発状の内容は助成金の不正受給などで「日本スポーツ振興センターと国に損害を与えた」として2人の背任を追及したもの。「柔道界だけで処理せず、法の裁きを受けてほしい」と、強い口調で言った。

 高校まで柔道をやり、現在も地元相模原市の柔道協会で相談役を務める同氏は「子どもたちが、胸を張って柔道をしていますと言えない。一刻も早く健全な形に」と訴える。衆議院議員時代には大相撲の八百長問題を取り上げたこともあったが「今は議員ではないから、その場がない」と告発を決意。知人である会社顧問の山田重人氏(47)とともに告発状を出した。

 上村会長は第三者委員会から不正受給と不正徴収が認められた約6000万円を返還する意向を示している。しかし、本村氏は「どこから返すかが問題。全柔連が返せば、今度は全柔連が損害を被る」と指摘。負のスパイラルから抜け出せない柔道界を嘆いた。

 全柔連は今日3日、改革・改善をさらにスピードアップする新プロジェクトを発表する予定。「期限を決めたのだから、やるしかない」と意欲を燃やす上村会長は、告発を聞いても「何も言うことはない」と話しただけだった。告発状の受理までは通常数週間。認められない可能性も少なくないが、競技団体のトップが告発される事実は大きい。暴力事件発覚から半年近く、混迷の先は見えてこない。

 ◆背任罪

 他人のために事務処理をする者が、自分や第三者の利益をはかるために相手に損害を与えることで成立する罪。5年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられる。今回の告発は、上村会長と吉村氏が全柔連の利益をはかるために日本スポーツ振興センターに損害を与えたとしている。また、被害者が捜査機関に対して犯罪を申告して処罰を求めれば告訴。被害者ではない第三者が申告する場合には告発となる。