<ノルディックスキー:全日本サマージャンプ朝日大会>◇14日◇北海道士別市、朝日三望台シャンツェ(HS68メートル、K点60メートル)

 女子は来年のソチ五輪で金メダル候補に挙げられる高梨沙羅(16=クラレ)が、2回合計228・9点で今季、夏の国内初戦をあっさりものにした。1回目に59・5メートルでトップに立ち、2回目は最長不倒の61・5メートルを飛び圧倒した。この日、第一人者で全日本スキー連盟(SAJ)の山田いずみコーチ(34)とパーソナルコーチ契約を結んだことも発表。“チーム沙羅”が金メダルへ本格始動した。男子は清水礼留飛(雪印メグミルク)が勝った。

 静かな勝利が激動のシーズン開幕を告げていた。高梨は、ソチ五輪に向けた今季、夏の初戦を圧勝しても、時折柔らかな笑みを浮かべたほかは、表情をほとんど変えなかった。報道陣約100人、1000人近いファンが詰め掛ける大フィーバーの会場にあっても、自分のリズムは決して崩さない。「いいスタートが切れたが、もっと精度を上げて安定性を高めたい」。目の前のことに一喜一憂せず、自分のやるべきことだけに集中した。

 存在感は圧倒的だった。2回目は「気合が入って突っ込みすぎた」と反省が口をついたジャンプでも、風をうまくつかむとこの日、女子では唯一のK点越えとなる61・5メートルまで飛んでいった。課題とされるテレマークも2回ともしっかり入れ飛型点でもトップ。それでも「もう少し歩幅を広くして誰が見てもテレマークが入っていると思われるようになりたい」と気持ちを緩めることはない。

 “チーム沙羅”が誕生した。この日、本紙評論家でもあるSAJの山田コーチがパーソナルコーチに就任したことが発表された。指導する父親の寛也さんをサポートするが、精神的な面でも支えになることは間違いない。さらに、この日はアスリート契約している森永製菓「ウイダー」の牧野講平トレーナー、細野恵美栄養士も同行。金メダルへ着々と態勢が整えられている。山田コーチは「五輪でのメダルへ少し手助けできれば」と全面バックアップを約束する。

 23日からサマーグランプリ(GP)に出場するため渡欧する。昨季、サマーGPを制し、そこからW杯総合女王にまで上り詰めた。「私はまだまだ未熟。高い技術があるわけではないので、よりレベルアップするために内容を考えていきたい」。16歳は足元を見失わず、1歩1歩大舞台へと歩を進めていく。【松末守司】