全日本柔道連盟の上村春樹会長(62)が25日、早期退陣の決断を明かした。23日に内閣府から「辞任勧告」を受けた上村会長はこの日朝、自身の進退を含めて「(期限とされた)8月末までに何とかしなければいけない」と発言。これまでメドとしていた10月から、辞任時期を大幅に前倒しすることを口にした。執行部を含む理事23人の解任が議題となる30日の評議員会前にも、自らの考えを明らかにする可能性が出てきた。

 東京・文京区の講道館に2日ぶりに現れた上村会長は、険しい表情のまま決意を込めて口を開いた。「勧告書は、8月末までにということだった。(改革のメドをつけて辞任する)区切りは10月と決めていたが、8月末までに何とかしなければいけない」。10月までの期間を示した記者の両手を見ると、間隔を狭めるように左手を握ってグッと右手に近づけ「急がないと」と、悲壮感を漂わせた。

 勧告書を受けた23日は、切羽詰まったものがなかった。辞任時期も、これまで通り10月を口にしていた。しかし、周囲の反応は想像以上。新聞報道で事実上の辞任勧告だと知り、外部理事として招いた橋本聖子氏の「総辞職しかない」など内部からも厳しい声があがった。改革への強い思いが勧告への徹底抗戦ともとられたが「そんなこと、あるわけない」。四面楚歌(そか)の中、残された選択肢は早期辞任だけだった。

 前日には東京を離れ、高校日本一を決める金鷲旗が行われている福岡で関係者と今後について協議した。この日は改革促進タスクフォースのメンバーである宇野広報委員長と話し合い、理事らの処分を検討する裁定委員会の早期立ち上げも進言された。会長の様子について、宇野氏は「勧告書はショックだったはず。(辞任の)覚悟を決めたように感じた」と話した。

 30日には、会長も含めた新任以外の理事23人の解任を求める評議員会が非公開で行われる。理事が一斉に解任されれば改革が遅れる可能性もある。宇野氏は不正受給、徴収された助成金6055万円について「きれいな形で次の人に引き継ぐためにも、現体制がお金を返す段取りだけはしないといけない」と話した。新たな体制にスムーズに移行するためにも総解任は避けたいはずで、評議員にも早期退陣という決断を知ってもらう必要が出てきた。

 辞任時期について「明日かもしれない」と話すほど上村会長は追い詰められている。内閣府の勧告は「現体制での改革は無理」と指摘するが、すでに改革が進んでいるのも事実。「真摯(しんし)に受け止める」と話した会長の表情は、これまでとは比べものにならないほど厳しかった。

 ◆内閣府からの勧告書

 公益認定等委員会の勧告により、安倍晋三首相の名で23日に出された。新公益法人制度5年目で初の勧告書は、稲田朋美行革担当相から上村会長に手渡された。暴力事件、助成金問題に触れて全柔連が公益法人を運営するための「技術的能力と経理的基礎」に欠けると指摘する内容。問題のあった助成金6055万円の返還と責任に応じた損害賠償の検討を求めるとともに「一連の不祥事について責任の所在を明らかにして適切な処置を講じて体制を再構築すること」と、上村会長を含む現体制の刷新を求める事実上の辞任勧告だった。