全日本柔道連盟(全柔連)は21日、東京都文京区の講道館で臨時の理事会、評議員会を開き、新日鉄住金の宗岡正二会長兼最高経営責任者(67)の会長就任を決めた。この日、上村春樹前会長ら執行部を含む理事23人が辞任。新体制は再任されたロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕氏が副会長に就き、監事には山口香氏が選出された。

 全柔連に「劇薬」が投入された。監事として、初めて女性の山口氏が就任。柔道界激震のきっかけとなった女子選手への暴力指導問題で相談役となった同氏は「(全柔連にとって)一番嫌な人間を選んだと思う」と自嘲気味に言いながらも「言うべきことはしっかり言いたい」と宣言した。

 女子柔道のパイオニアでもある「女三四郎」だが、歯に衣(きぬ)着せぬ発言が柔道界で好ましく思われなかったのも事実。この日の評議員会でも、他の理事や監事が賛成多数で選出されたのに対して、賛成34人(過半数は27人)とギリギリの「当選」だった。

 監事の職務は、理事の職務執行を監査すること。山口氏は「少し離れた立場で物が言える。理事として中に入るより、やりやすい」と前向きに言った。機能不全とも言われた理事会に、女性ならではの厳しい視線が注がれることになる。

 女性理事4人は、いずれも個性派ぞろい。橋本氏や谷氏らとは意見が衝突することも予想されるが「周囲は、すぐ女同士のけんかだとか言うけれど、意見をぶつけ合わないと前に進まない」。一連の問題の背景には「物が言えない組織」があった。「毒にも薬にもならない」理事、監事を「劇薬」山口氏が劇的に変えそうだ。