【ブエノスアイレス5日=阿部健吾】招致レースが大混戦の模様を呈してきた。東京が有利とみられていたが、福島第1原発事故による放射能の環境への影響が海外メディアの関心の中心に。東京の記者会見では2日続けて質問が集中した。マドリードは財政危機、イスタンブールはドーピングとそれぞれ“弱点”への質問が続いたが、明確に回答。東京だけが放射能の影響について安全を問われ続けている。

 会見でのプレゼンテーションの内容と、質疑応答では別の時間が流れた。それも2日続けて。

 5日に東京が会見で行ったのは15人の五輪・パラリンピック出場者による「アスリート宣言」。普及と発展、フェアプレー、国際貢献と交流、社会貢献の4つの信条を定める発信を行ったが、関心は放射能汚染の影響が主だった。

 前日4日も同じ光景だった。日本の技術力アピールにロボットも投入したが、6つの質問で4つが安全性を問う声。日本オリンピック委員会の竹田理事長は「水、食物、空気は非常に安全なレベル。政府が責任を持ってこの問題を解決すると発表している」と何回も繰り返したことに、外国メディアは「答えになっていない」と手厳しかった。

 この日も2つがそれ。質問が飛ぶと、馳浩衆院議員が返答。政府代表の立場で「汚染水の濃度は健康にも環境にも問題ないと出ている。3日に国費470億円をつぎ込む対策の基本方針も決まった」と説明した。

 会見では、ドーピング関連の声明もあった。その問題が「弱点」のイスタンブールを意識したと思われ、太田雄貴が「日本はいままで五輪、パラリンピックで陽性反応がでたことは1度もない」と主張した。

 見方によっては、逆風のなかでの焦りの裏返しにも見える。7日の開催地決定を前にした攻防戦の結果はどう響くのか。