【ブエノスアイレス6日=阿部健吾】20年夏季五輪・パラリンピックの開催地が今日7日(日本時間8日午前5時)、ついに決定する。東京の招致委員会は6日、国際オリンピック委員会(IOC)総会で投票が行われる前の最後となる3度目の公式会見を実施。福島第1原発事故による放射能汚染水の問題で逆風が吹く中、東京都の猪瀬直樹都知事(66)は「風評的でなく、情報公開された中身を読んで質問を」と強気に要求した。

 焦点は1つだ。現地での2度の会見も含め、東京への関心は「汚染水」で一致している。懸念材料を拭い去れるかどうか。最終局面を迎えた猪瀬知事は強気だった。3度目で最後の記者会見の席上で、「日本が公表している情報の中身を読んで質問していただくことが第一。そうでないと風評になる」と要求した。さらに「風評がメディアを覆っている」と指摘した上で「フェアな情報をきちんと提供すれば、ほとんどの問題は解決する」と訴えた。

 これまでの2度の会見では説得材料を提示できていなかった。海外メディアから幾度も質問が飛びながら、政府の保証、水や食料の安全を訴えたが、不安を問う報道が広がった。

 開催都市を決める投票直前にイスタンブール、東京、マドリードの順に45分ずつ行うプレゼンが待つ。約100人のIOC委員にアピールする最後の場も含め、質問の「質」を求めた。

 政府が3日に決めた、問題解決に向けた国費470億円をつぎ込む基本方針は、経済産業省のHPの中で英語で公開している。前日の公式リハーサル後には、「東京も、すべての数値を公開している。英語の表記も付け加えている」と情報公開に自信をみせた。その上で、「具体的な質問には具体的に答えることになる」と話した。

 果たして、東京が自分から積極的に働きかけず、相手が東京に説明を求めるスタンスで、不安が解消されるか。疑問は残るが、“ラストチャンス”も残っている。64年東京五輪から22大会を取材し、五輪の歴史に関する公式本も出版したデビッド・ミラー氏は「遅くはない。問題はスポーツを超えている。答えられなくてもしょうがない。まだ間に合う」と分析。国の代表として登壇する安倍晋三首相のスピーチ、その説得力こそが鍵とみた。

 前日5日、プレゼン会場でロビー活動した招致委員会の福田副理事長は、「誰が東京が有利と言ったのか。マドリードに勢いがある」と危機感をみせた。

 猪瀬知事は最終プレゼンに向け、「手応えはある。この勢いで本番に臨みたい」とやはり強気だ。にわかに吹き始めた逆風の中、堂々とトップで東京招致決定のゴールテープを切れるか。審判の時がくる。