<フィギュア:ジャパンオープン>◇5日◇埼玉・さいたまスーパーアリーナ

 今季限りでの引退を表明している浅田真央(23=中京大)が、シーズン初戦の大会でフリーに臨み、衣装を初披露。基調は青。五輪過去4大会連続で金メダリストが着た色で、ソチでの頂点へ決意の一着となった。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も決め、135・16点。非公式ながら3月の世界選手権での自己ベスト(134・37点)を上回る最高のスタートを切った。

 青い花びらが浅田を包んでいた。上半身に着ていた白いウインドブレーカーを脱ぎ、直前練習から2万人以上の観客の視線を引き込む。それぞれの目に映る鮮やかな「青」は、「体の中心からパワーが出る衣装」。おへそ付近から花弁のように、スカイブルーからインディゴブルーまで、青いコントラストが広がる。赤いラインも交えた勝負服は、出来上がりをみて「すごく良いな!」と一目ぼれした。同時に、女子シングル選手にとっては金メダルへと導く衣装だ。

 98年長野大会のリピンスキー、02年ソルトレークシティー大会のヒューズ、06年トリノ大会の荒川静香、10年バンクーバー五輪の金妍児…。胸に金メダルを輝かせた女王たちがまとっていたのは、すべて青だった。「青が勝つ」。フィギュア界で、まことしやかにささやかれる法則だ。

 浅田の好きな色は赤。ただ、かつての師であり、制作を一任しているタラソワ氏がロシアから送ってきたのは意外な色。使用するラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」が荘厳な曲調で明るい色が適さないという理由に加え、“ソチ仕様”とも言えそうだ。五輪会場「アイスベルク」は、会場内外が青を基調とした内装。なじむような見栄えを同氏が思案した可能性は高い。関係者は「金メダルは青と意図したわけではないでしょうが、縁起が良いですね」と言った。

 衣装が「万全」なら、演技の方でも万全な調整ぶりを見せた。3回転半をシーズン初戦で跳ぶのは4季ぶりだったが、冒頭で何とか着氷。演技前、「できるかな」「いや、できる」と不安とせめぎ合った心境が、浅田の代名詞の大技成功で晴れると、あとは「見せ場」とする最後のステップまで、ピアノの力強い響きに共鳴する、ダイナミックな動きを氷上に描いた。

 「課題のスピン、ステップでレベルを取れた」。4つ全てを最高難度4の評価を得た。あごを天に突き上げるようなフィニッシュポーズを解くと、思わず自分でも拍手し、会場からはスタンディングオベーションの贈り物。得点を待つ間には両手でピースサインまで見せた。自己ベストを上回る得点には「私自身は得点のことは気にしていない」と冷静だったが、初戦から手応えを得て、自然と表情は明るくなった。

 12月末には同会場で、女子シングルの五輪出場枠「3」を争う選考会の全日本選手権が控える。この日は演技後に「会場が暑くて、ちょっと大変だな」と見据えたが、ここでも顔が曇ることはなかった。あるのは、「次につながる滑りができた」という感覚のみ。次戦はGPシリーズのスケートアメリカ(18日開幕、デトロイト)。1戦1戦と「青い跳躍」を重ね、ソチの頂へと飛ぶ。【阿部健吾】