<フィギュアスケート:関東選手権>◇14日◇新横浜スケートセンター

 フィギュアスケート元世界女王の安藤美姫(25=新横浜プリンスク)の2季ぶりの国内復帰戦は、課題を残す優勝となった。ショートプログラム(SP)1位から、フリーでも91・05点と出場5選手で首位は守ったが、合計は147・30点と低迷。4月の女児出産を経た体のスタミナ不足は明らかで、ソチ五輪出場へ厳しい結果となった。2次選考会の東日本選手権(11月、群馬)進出は決定。大会結果により、日本スケート連盟の強化指定選手に復帰する可能性は残した。

 表情をしかめてリンクの天井を仰いだ。疲労と落胆。肩で息をする安藤は、得点が出る前から厳しい現実を痛感していた。フリーを滑るスタミナ。3季ぶりの復帰戦となった9月下旬のネーベルホルン杯(ドイツ)で露呈した課題が、日本でも重くのしかかった。試合後、他選手の迷惑になるからと紙で発表したコメントには、「今の自分に何が足りないかが明確になった」の文字があった。

 終盤に息切れした。基礎点が1・1倍になる“稼ぎ時”の演技後半のジャンプでミスを連発。3回転ループは2回転で手をつき、3連続ジャンプはダブルアクセル(2回転半)の単発に。3分過ぎからのステップの動きにもシャープさが欠ける。約40秒間、もがくように必死に体を動かした。

 この2週間は、時差ぼけなどで体調不良に陥り、満足な練習ができなかった。コメントでも「久しぶりの国際試合で疲れを残してしまい…」と記した。古傷の右肩痛なども重なり、スピンも十分に回れず。ネーベルホルン杯の103・07点を10点以上下回った。

 ただ、試合を見た日本連盟の小林強化部長は、強化指定選手への復帰について「ネーベル(ホルン杯)のことも入れて考えます」と述べた。3段階の指定で最もランクの低い「強化B指定選手」の条件は、全日本選手権12位以内か、相当のシーズン記録を持つ選手。安藤はこの2戦でクリアしており、16日の理事会で復帰が決まる可能性はある。

 ドイツでは、国際スケート連盟(ISU)がソチ五輪出場資格とする最低技術点を超えた。今大会の優勝で東日本選手権進出も決め、「第2関門」も突破した。五輪に出るために「優勝しないと」と覚悟する全日本選手権まで、あと約2カ月。どこまで体力を戻せるかで、扉の重さも決まる。【阿部健吾】