記憶も記録も-。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯は8日、東京・代々木第1体育館で開幕する。7日の公式練習で浅田真央(23=中京大)は、振り付けを手直しし、視線など細部にこだわった新ショートプログラム(SP)を披露した。浅田は同杯に勝てば、GPシリーズ13勝目となり、98年長野五輪銀メダルのミシェル・クワン(米国)と並び歴代2位の通算勝利数となり、3位以内でGPファイナル(12月、福岡)出場が決まる。

 「今回も1段でも2段でも階段を上れる試合にしたいと思っています」。練習を終え、都内のホテルで行われた記者会見の壇上。浅田は白い歯を見せて、さわやかに決意表明した。

 そのために新たに披露するのがショパン作曲「ノクターン」で滑るSPになる。優勝した先月のGP第1戦スケートアメリカ後にカナダに渡り、振り付けたニコル氏と改良を加えた。スピンの位置、ジャンプとジャンプの間のステップなど、随所に手を施した。「より魅力的なものになった」「愛あふれるノクターンになった」と自信がある。

 バージョンアップしたSPを、佐藤信夫コーチは「記憶に残るようなものになってほしい」と評する。身ぶり手ぶりをさらに大きく、視線の動きまでこだわる。「ただ遠くを見つめるのでなく、山があるように見つめて」。ニコル氏にはそこまで具体的に要求されているという。

 そこで「階段を上れ」れば、自然と記録もついてくる。GPシリーズ13勝目を挙げれば、世界選手権も5度制覇したクワンと並ぶ歴代2位。「そうなんですか!」とほほ笑むと、「できることをしっかりとやるだけですね」と続けた。

 練習では調子のバロメーターであるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も幾度も成功し、好調さを維持する。フリーでも、連続3回転と2回転半-3回転のジャンプを決める目標を立てた。「集中して、すべてを出したい」。そうなれば、階段を踏み外す心配はない。【阿部健吾】