<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第4戦・NHK杯>◇8日◇東京・国立代々木競技場

 GPシリーズ連勝を狙う浅田真央(23=中京大)が首位発進を決めた。代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を何とか着氷させ、71・26点で1位。優勝したスケートアメリカに続き、初めて2戦連続で70点台を出し、高いレベルでの安定感を示した。2連覇での4度目の優勝、3位以内で決まるソチ五輪の代表選考に関わるGPファイナル(12月、福岡)出場にも前進した。

 会場に詰め掛けた9238人の観衆が見届けた3回転半と、浅田の体が感じた3回転半は、違っていた。演技冒頭、静寂の中で跳んだ大技。着地でわずかに右足が氷を削った。転倒を避けるために、くるりと1回転を加えなければならなかった。決して成功とは言えないが、その見た目とは裏腹の言葉が聞かれた。

 浅田

 感触はとても良かったです。時にはこういうこともあるかな。昨シーズンに比べて全然いいジャンプ。自信を持っている。

 出来栄え点で減点されたジャンプは、昨季と違う確信を抱かせた。今季取り組んできたことが実を結んでいる。

 今季が現役最後と決めた浅田陣営が掲げるテーマは「攻め」。浅田は「チャレンジ」という言葉を口にし、佐藤久美子コーチは「守りに入ったところで終わりだよ」と諭してきた。中でも大きな挑戦は筋力トレーニング。思い切ってメニューを変えた。

 オフから本格的に、体幹を鍛え始めた。繊細な筋肉が必要なフィギュアで、その付き方はジャンプに影響する。浅田は昨季終盤の試合で3回転半を良化させ、オフを迎えていた。筋トレの内容を変えてジャンプが崩れる可能性もあったが、守ることはなかった。成果は回転速度。日本代表の加藤トレーナーは「軸が安定して速さが増している」と説明する。この日も回転は高速だった。

 これまで直前現地入りだった海外遠征を早めに入るようにしたり、靴の重さを軽くしたり、他の要素でも「攻め」る。この日のSPも同様だ。スケートアメリカでの高得点に満足せず、表現面を新装。振り付けしたニコル氏にカナダで会い、さらに磨き上げた。

 ジャンプとジャンプの間のつなぎなど、視線まで含めて感情を込める。表現面を評価する演技構成点は、自己ベストを更新する34・37点。「レベルアップした『ノクターン』を見せられた」。演技を終えるとにっこりと笑い、1度だけうなずいた。2戦連続のSP70点台。大技が完璧に決まらなくても、他選手を寄せ付けない強さが際立った。

 フリーでは、スケートアメリカで転倒した3回転半の雪辱に燃える。さらに連続3回転、2回転半-3回転の連続技を成功させる目標も立てる。「完成度には100%はないと思っています」。だから、浅田は強い。【阿部健吾】

 ◆演技構成点

 5つの要素で構成される得点。<1>スケーティング技術<2>要素のつなぎ<3>動作<4>振り付けと構成<5>曲の解釈で、0・25点刻みの各10点満点。女子ではSPは0・8倍、フリーは1・6倍して演技構成点として算出される。この得点とジャンプなどの技術点を合わせたものが各演技の合計得点。

 ◆ソチ五輪代表選手選考方法(男女シングル)

 全日本選手権終了時に五輪参加有資格者(※)の中から、以下の選考方法で決定。<1>1人目は全日本選手権優勝者。<2>2人目は、全日本2位、3位の選手とGPファイナルの日本人表彰台最上位者の中から。<3>3人目は、<2>の選考から漏れた選手と、全日本選手権終了時点での世界ランク日本人上位3人、ISUシーズン最高得点の日本人上位3選手の中から。

 ※=(1)五輪参加年齢を満たす(2)全日本選手権終了時までにISUが定める五輪出場のための技術最低点を獲得(3)全日本選手権に参加