女子アイスホッケーのソチ五輪代表メンバー21人が4日、東京都内で発表された。DF鈴木世奈(22=SEIBUプリンセスラビッツ)は、60年スコーバレー大会から3大会連続出場した祖父守さん(75)と同じ大舞台の切符を勝ち取った。子供のころから教えを受け、敬意を込めて「鉄人」と呼ぶ祖父への恩返しに、メダル獲得を誓った。

 偉大な祖父と同じ舞台に立つ。鈴木の祖父守さんは60年スコーバレー、64年インスブルック、68年グルノーブル五輪でエースFWとして活躍した。大沢主将らと代表発表会見に参加した鈴木は「みんな力を合わせて、おじいちゃんを超えるメダルを目標にしたい」。しっかり前を見据えた。

 小学1年から守さんに教わってきた。怒られたことはほとんどない。シュートを外しても「よくゴール前まで行った」と攻めの姿勢をほめられた。「ホッケーを好きになって欲しかった」と守さん。祖父の希望通り、鈴木は順調に成長し、高校生で日本代表に選ばれるまでになった。

 高校3年で世界選手権に出場。だが、その後の10年バンクーバー五輪最終予選のメンバーからは直前で漏れてしまう。ショックは大きかったが、そのとき頭に浮かんだのは、守さんの信条でもある「練習はうそをつかない」だった。「悔しかったが、自分の実力不足で練習不足。人より倍やらないとうまくならないし、練習すれば夢がかなう」と思い直し、4年後の五輪代表にもつなげた。

 守さんは、日本代表の合宿、試合を必ず見に来てくれる。今もパスのタイミング、シュートコースなど的確なアドバイスを受ける。日本チームの生命線はスピード。ソチでは守さんの「早く3歩足を動かし、相手のFWを置いて、攻めにつなげろ」との教えを実践していく。

 まだ、祖父に「ありがとう」と言うつもりはない。鈴木は「五輪は出ることが目標ではない。結果を出してから感謝の言葉を伝えたい」と言い切る。日本はロシア、スウェーデン、ドイツと同じグループ。強豪チームを勝ち抜かないとメダルはない。厳しい道のりが待っているが「鉄人」の魂を背負った鈴木に恐れはない。【田口潤】

 ◆鈴木世奈(すずき・せな)1991年(平3)8月4日、北海道苫小牧市生まれ。小学1年で競技開始。苫小牧東高から法大。現在はSEIBUプリンセスラビッツでプレーする。09、12、13年世界選手権出場。今年2月のソチ五輪最終予選にも出場した。攻撃的DF。好きなタレントはマツコ・デラックス。166センチ、57キロ。