<フィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル>◇最終日◇7日◇マリンメッセ福岡

 浅田真央(23=中京大)が、ソチ五輪金メダルへの覚悟を固めた。3年ぶりに2度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を組み込んだフリーは2本とも失敗に終わったが131・66点の1位とし、合計204・02点で2連覇を達成。超高難度プログラムを今後も貫く方針を示し、ぶれない決意をみせた。大会最多タイの通算4勝目で、ソチ五輪最終選考会の全日本選手権(21~23日、埼玉)を前に、代表争いでも大きくリードした。

 その言葉は少しの迷いもなく、ためらいもなく、浅田の口から発せられた。

 浅田

 アクセル(3回転半)2回は体力的に負担が来るのは分かっていますが、今日やった構成で臨んでいきたい。

 演技後の記者会見をそう締めくくった。「ぶれない」。2カ月後に迫ったソチ五輪への強い覚悟を言葉に乗せた。

 体力的な負担を痛感するフリーだった。10年世界選手権以来の2度の3回転半挑戦。冒頭の1本目が大きく崩れた。着氷の衝撃に耐えられず、バランスを崩した。「もう1度落ち着いていこう」と向かった2本目も両足着氷で回転不足に。「その後は立て直せた」と一定の評価もしたが、難しさとリスクを肌で感じた。

 それでも、逃げない。11月のNHK杯後、2本跳ぶことを佐藤コーチに直訴した。「当然出てくるな」と予期していた恩師は、それから何も言わなかった。「本人の夢。なんとか頑張ってかなえさせてあげたい」。今季は試合では1度も3回転半を成功させていなかったが、信じた。浅田はその気持ちをくんだ。そして覚悟を固めた。

 後押しする出会いもあった。この日、会場で92年アルベールビル五輪銀メダルの伊藤みどりさんに再会した。同じ山田コーチに師事した先輩で、お下がりの衣装で滑ったこともある。「頑張ってね」。短い言葉に勇気をもらった。伊藤さんは五輪史上初めて3回転半を決めた先駆者。特にフリーでは1本目で失敗しながら、2本目で成功させた。「絶対跳ぶ」。そんな決意があったからこそ。ソチ五輪で頂点へ、浅田にも同じ決意がある。

 2連覇で代表争いでも大きく前進したが、全日本選手権への視線は演技内容に注がれる。「失敗と成功の繰り返しだと思う。次は同じ失敗をしない」。2度跳ぶ。10年バンクーバー五輪金メダルの金妍児も6日にクロアチアで復帰した中、現役の女子フィギュア選手で誰も出来ない領域へ。ただまっすぐ前を見つめていく。【阿部健吾】