柔道男子日本代表の井上康生監督(35)が、8月の世界選手権(ロシア・チェリャビンスク)で100キロ級代表を選出しない可能性を示唆した。選考会となる全日本選抜体重別選手権(5、6日、福岡)を控えた4日に福岡市内で、「100キロ級は世界ランクでも30位以内はゼロ。16年(リオ五輪)で勝つために出さないこともありうる」と述べた。五輪と世界選手権で枠を“返上”すれば、日本男子柔道史上初になる。

 強い危機感がある。99年に現行の階級制になって以降、井上監督、現コーチの鈴木桂治氏、穴井隆将らが世界に君臨した時代は見る影もない。昨年の世界選手権では小野卓志(了徳寺学園職)が5位に終わり、国際大会での活躍も乏しい。世界ランクでは32位の熊代佑輔(ALSOK)が最高位で、30位以内に1人もいないのは全7階級で同級だけだ。

 100キロ、100キロ超級の世界選手権代表は29日の全日本選手権後に発表されるが、井上監督は「苦渋の決断ですが、16年に必ずメダルを取るための考えの1つ」と戦いぶりしだいでは選ばない。その代わりに合宿や遠征など「強化プランを練っている」という。自分が愛した階級への痛みを伴った改革。あきらめたわけではない。すべては五輪で勝つために大なたを振るう。【阿部健吾】

 ◆男子100キロ級

 現行の階級制となった99年以降、五輪では4大会中1大会、世界選手権では9大会中5大会を日本選手が制している。井上康生は00年シドニー五輪と世界選手権3連覇(99、01、03年)。鈴木桂治は05年、穴井隆将は10年に優勝した。08年北京五輪金メダルの石井慧は07年までは100キロ級が主戦場だった。