<卓球:JA全農世界選手権団体戦>◇第4日◇1日◇東京・代々木第1体育館◇男女1次リーグ

 救世主のカットマンが、日本男子を1次リーグC組の1位通過に導いた。初代表の世界ランク26位の塩野真人(28=東京アート)は今大会初出場。1-1で迎えた3番手で、ハンガリーのタマス・ラカトシュにストレート勝利した。流れを変えて日本の3-2の勝利に貢献。今日2日から決勝トーナメントが開幕。昨年は一時引退を考えたチーム最年長の28歳が4大会連続メダルのカギを握る。

 変幻自在の七色サーブがさく裂する。塩野は、今大会用に取り組んだ新サーブでハンガリーのラカトシュを揺さぶった。2-0で迎えた第3ゲームは14-13。粘り強いプレーで相手のミスを誘い、4回目のマッチポイントを制す。「最初は硬かったが、だんだんほぐれた」。5試合目にして初出場した最年長28歳は冷静に試合を振り返った。

 スタイルはカットマン。バックだけでなくフォアハンドでも、チョップのようにラケットを振り下ろす。両ハンドからの変化球で、相手を混乱させ、時に順回転のスマッシュを決める。緩急を使ったベテランの妙技で、日本の1次リーグ1位通過の原動力になった。

 1年前には引退を考えていた。昨年1月の全日本選手権では初戦敗退。若年層の活躍が目立つ卓球界では決して若くない。落ち込んだが「この1年は、最後と思って頑張ろう」と思い直す。大好きだったワイン、ウイスキーはお祝いの時以外は控えた。揚げ物も口をつけず、食事も節制。大嫌いだったランニングも1日5~10キロをノルマにした。

 「服のサイズがLからMになった」と体重は71キロから61キロに減った。スピードがつき、スマッシュの切れも増す。5カ月後の同6月のジャパンオープンでは自費参加で予選からはい上がって初優勝。同8月のチェコオープンも制し、世界ランクは昨年の184位から26位に急上昇。世界選手権初代表も勝ち取った。

 4月30日に28歳の誕生日を迎えた。昨年引退を考えた男は「遅咲きとは思っていない。ソチ五輪の葛西さんは41歳」と前を見据える。この日は2階席からフィアンセの応援も受けて、力に変えた。今日2日には4大会連続メダルのかかる決勝トーナメントが始まる。「結果が出て、自信になった。もう1度、気を引き締めたい」。28歳の雑草男は冷静だった。【田口潤】

 ◆塩野真人(しおの・まさと)1986年(昭61)4月30日、埼玉県入間市生まれ。中高時代は全く無名。早大時代も、インカレ8強が最高成績。しかし、国際舞台ではめっぽう強く13年ジャパンオープン、チェコオープン優勝。世界ランクを100位以上上げた。東京アート所属。170センチ、61キロ。