<卓球:JA全農世界選手権団体戦>◇第7日◇4日◇東京・代々木第1体育館ほか◇男女決勝トーナメント

 佳純が決めた!

 女子で団体世界ランキング3位の日本が、31年ぶりに銀メダル以上を確定させた。世界9位でエースの石川佳純(21=全農)が、ともにフルゲームながら2勝を挙げる活躍で、同4位の香港に3-1で勝ち、83年東京大会以来の決勝に進んだ。決勝では、71年名古屋大会以来43年ぶりの金メダルをかけ、同1位の中国と対戦する。

 前夜は劇的な勝利に泣き、この夜は最高の佳純スマイルがはじけた。石川が、ともに1-2から逆転で2勝。日本に新たな歴史をつくった。「正直、信じられない。31年前なんて想像できない」。第4試合の勝利の瞬間、何度も跳びはねた。

 第3試合で、平野が逆転勝ち。その勢いを受けて第4試合。「平野さんがすごい試合でつなげてくれた。絶対に勝ちたかった」。姉のように慕う平野の涙を見ると、笑顔に涙が交じった。

 右手を突き上げ、声を出し、何度も自らを奮い立たせた。第2試合も、第4試合も劣勢からの挽回劇だ。前日のオランダ戦でまさかの敗戦を喫した。「昨日の痛みがあったから、今日は勝てた」。1日でしっかりと気持ちを立て直した。

 昨秋から中国で元世界5位の陳莉莉コーチの指導を受けている。陳コーチが最も力を注いだのは、精神面だ。試合が終わる度に、1対1で話すのが日課となった。「自分がどう思って試合をしたのかを何度も話させた」と陳コーチ。気持ちを話すことで、自分を冷静に見つめ、動揺しない精神的な強さにつながった。

 2枚看板となるはずだった福原愛を、疲労骨折で欠いた。「福原さんがいない団体戦は初めての経験だった」。日本は世界3位だが、それは福原の個人の世界ランクを含んでの計算。福原を欠くと「7位ぐらい」(村上恭和監督)という。その穴を1人で埋め、エース、地元、スポンサーへの重責を、石川はすべてはねのけた。

 運にも恵まれた。村上監督が「この組み合わせで決勝に行けないのは恥ずかしい」と言うほど、決勝トーナメントは最高のドローとなった。中国はもちろんのこと、日本が苦手とする北朝鮮、韓国も、抽選の結果、すべて中国側に入った。オランダ、この日の香港と苦戦はしたが、最後は地力で勝ち上がった。

 待ちに待った中国との決勝だ。直近では昨年7月のアジア選手権決勝で0-3と完敗した。しかし、日本や石川に失うものはない。「練習してきたこと、経験してきたことを全部ぶつけたい」。石川の目は、しっかりと打倒中国を見すえていた。【吉松忠弘】

 ◆石川佳純(いしかわ・かすみ)1993年(平5)2月23日、山口市生まれ。愛ちゃん2世で注目を集め、11年全日本選手権女子シングルスで初優勝(4人目の高校生女王)。12年ロンドン五輪シングルスで日本勢史上最高4位、団体戦では福原愛らと史上初の銀メダル獲得。157センチ、49キロ。