<テニス:マドリード・オープン>◇11日◇マドリード

 世界王者に迫った!

 12日、最新世界ランキングで、日本男子として初めてトップ10入りし、アジア男子最高位と並ぶ9位になった錦織圭(24=日清食品)が、同1位ラファエル・ナダル(27)に6-2、4-2と途中までリードを奪いながら、でん部の痛みが悪化。最終セット0-3で棄権した。今週出場が予定されたイタリアンオープンを欠場し、一時、拠点としている米フロリダに戻った。25日に開幕する4大大会、全仏に照準を合わせる。

 右手にはめた黄色いリストバンド。そして、髪を押さえるヘアバンドも外した。それが棄権の合図だった。錦織はナダルに歩み寄ると「ソーリー」とひと言。そして、審判に握手を求めた。「自分の人生で最高のプレーをしていた。それを棄権なんて、すごくつらい」。悩みに悩んだ末の決断だった。

 第2セット第8ゲームで足を引きずった。2度、トレーナーを呼んだが、最終セットはまったく動けず。サーブも入れるだけ。その中で3ゲームをプレーした。何度もうつむき、続行と棄権のはざまで揺れた。初のマスターズ大会決勝で、相手はナダル。そして勝利は目の前にあった。「ケガさえなければ、勝てるチャンスだった」。タオルで顔を覆った。

 ナダルのバックを攻めた。フォアに比べ、威力を欠くバックを攻めることで、返球が浅くなる。そこから、一気に広角に攻めを転じ、ナダルを完全に封じ込めた。第1セットを奪い、第2セットも4-2とリードした。ここで「一気に痛みが来た」。勝利まで残り数ゲーム。万事休すだった。

 クレーでの連勝は10で止まった。しかし、「ケガよりも、得た自信の方がはるかに大きい」。2週間後の25日には全仏が開幕する。ケガの回復が心配されるが「本当に楽しみ。こんなにクレーでいい感じなのは初めて」と力強い。欠場のサインなどみじんもない。

 世界のテニス関係者は、すでに「全仏の優勝候補の1人」と、錦織の名前を挙げる。世界王者に対してさえ、すでに超えられると感じた一戦で「昨年もいいプレーができたが、今年はレベルが違う。今なら、どこからでも攻撃できる」と、自信は膨らむ。自らの肉体との闘いを制すれば、4大大会優勝も、決して夢ではないところまで迫っている。