<テニス:全米オープン>◇第3日◇27日◇米ニューヨーク・ナショナルテニスセンター◇男子シングルス

 苦痛の幕切れとともに、予選勝者で世界126位の伊藤竜馬(26=北日本物産)が全米初勝利を挙げた。対戦相手で同51位のジョンソン(米国)が全身けいれんに襲われ、6-2、3-6、5-7、4-1の時点でプレー続行不可能となり、伊藤が棄権勝ちした。

 劣勢の流れを、悪夢のけいれんで、アッという間に逆転した。伊藤が体力で消耗戦に勝ち、ジョンソンを棄権に追い込んだ。「何と言っていいか分からないけど、ここに立てている喜びを味わいたい」。勝利にも複雑な心境で、相手に握手の手をさしのべた。

 セット1-2からの第4セット。異変は第2ゲームで起きた。ジュースで第1サーブを放った相手が右太ももをけいれん。コートに倒れ込んだ。苦痛で顔をゆがませ、のたうち回る。時間だけが経過し、ポイント間が20秒とされる規則などに触れるとして、遅延行為が言い渡された。罰則として、ポイントやゲームを得た伊藤が、プレーせずにゲーム2-1とリードした。

 第4ゲームでも相手は全く動けず、伊藤の4-1となって、棄権が決まった。座っているだけで汗が噴き出す蒸し暑さ。2時間45分の熱戦に、伊藤は「体力的には大丈夫だった。トレーニングをしていて良かった」と頑丈な体に感謝だ。

 7月の米ニューポートでの初対戦では、相手のバックばかり攻めて失敗。最終的に左膝を痛めて棄権を強いられた。「今回は振り回した。それが徐々に効いてきたのだと思う」。伊藤にもけいれんの兆候はあった。「笑うことでリラックスし」前回の雪辱を棄権返しで果たした。全米では1回戦の勝敗で、賞金が約370万円と約628万円で倍近く違う。伊藤の執念が倍返しと全米初勝利につながった。【吉松忠弘】

 ◆今回の遅延行為

 伊藤からゲーム0-1。ジョンソンのサーブの第2ゲーム。ポイントはジュースで、第1サーブをフォールトしてけいれんが起きた。ポイント間の20秒を過ぎたとして、最初の警告で、ジョンソンの第2サーブがフォールトとなる罰則が科せられた。結果、ダブルフォールトとなり、アドバンテージ伊藤。続く20秒も過ぎ、2度目の警告で、伊藤にポイントが与えられ、そのままゲーム。1オールとなった。その後の3度目の警告で、伊藤にゲームが与えられ、伊藤のゲーム2-1となった。

 ◆WOWOW放送予定

 29日午前7時55分~、30日午前0時~、WOWOWライブ。第4日ナイトセッション、第5日デイセッション。男女2、3回戦ほか。生中継。放送時間変更の場合あり。