<柔道:世界選手権>◇第4日◇28日◇ロシア・チェリャビンスク◇女子63キロ級

 これが一本柔道だ-。初出場の田代未来(20=コマツ)が、若さあふれる攻めの姿勢で銅メダルを獲得した。準決勝で昨年優勝のヤーデン・ジェルビ(25=イスラエル)に試合運びの甘さをつかれて敗れたが、他の5試合に一本勝ちして16年リオデジャネイロ五輪の金メダル候補に名乗りを上げた。

 前へ、前へ、田代は攻めた。昨年女王ジェルビに対しても、積極的な姿勢は変わらない。序盤に内股で技ありを奪い、なおも寝技で一本を狙った。巧みに返され、逆に抑え込まれて一本負けしたが、3位決定戦でも攻撃を徹底。グウェンド(イタリア)に肩固めを決め、5つめの一本勝ちをして「負けたけど、楽しく柔道ができた」と話した。

 「天才」だ。小、中学校のタイトルを総なめ。15歳で世界カデ(16歳以下)に優勝し、16歳で世界ジュニア(19歳以下)も制した。淑徳高2年の11年7月に左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂したが、復帰まで1年間の長いリハビリ生活で精神的にも鍛えられた。

 憧れは04年アテネ、08年北京五輪を史上初のオール一本で連覇した谷本歩実。世界を意識したのも「アテネの金メダルを見て」という。周囲も田代の一本柔道に谷本を重ねる。コマツ入りも「谷本の後継者」と期待されたから。自他ともに認める「谷本2世」だ。

 今年2月、フランスにコーチ留学中の谷本氏を訪ねた。1カ月間、指導を受けた。「まだまだ若いと言われるけれど『まだまだと思っていたら夢のままで終わる』と言われました」という。その谷本氏も高卒2年目で挑んだ初の世界選手権は3位。その経験を糧に、五輪金メダルを手にした。

 南條監督は「準決勝も逃げ切る気持ちはさらさらなかった。1歩も引かなかったことを評価したい」と攻撃柔道を絶賛。田代は「これからもっと強くなれると思う。手応えを感じることができた」と、リオの金メダルを目指して言った。

 ◆田代未来(たしろ・みく)1994年(平6)4月7日、東京都生まれ。小学校2年の時に柔道を始める。相模原市立相原中3年の時に世界カデでオール一本の優勝、東京・淑徳高1年のユース五輪もオール一本で優勝、同年の世界ジュニアも制した。2年時の負傷で国内の高校主要タイトルはなし。13年2月の欧州オープン・ソフィアで国際大会初優勝し、同年4月にコマツ入りした。163センチ。