テニスの全米オープンで、4大大会アジア男子初のシングルス準優勝に輝いた世界8位の錦織圭(24=日清食品)が、今年、新たな快挙に挑む。13日、拠点としている米フロリダから成田空港に凱旋(がいせん)帰国。成田市内のホテルで会見を開き、年末上位8人しか資格がないツアー最終戦ATPツアーファイナル(11月9日開幕・ロンドン)日本男子初出場を誓った。

 黒のシャツにグレーのジャケット。大人のシックないでたちで錦織が到着ロビーに姿を現した。出迎えた約200人のファンから歓声が上がる。「自分の人生の中でも、最もたくさんの人が迎えてくれた。気持ちも高ぶっている。本当にうれしい」。

 日本の枠を飛び越えて、4大大会ではアジア男子初の快挙を達成しての帰国だ。「日本やアジア人でも4大大会の決勝に立てるという、1つの壁を越えられた」。自身初めてトップ10に3連勝したことも「夢の世界1位に少し近づいた。大きな自信になる」。

 しかし、リラックスできるのは今週まで。22日には、次戦のマレーシアオープンが開幕。11月9日のツアー最終戦まで5大会に出場し、最終戦出場という再び日本男子初の快挙に挑む。「今年の目標のひとつ。出るのは本当に名誉なこと」。

 最終戦は現行のツアー制度が始まった70年から、毎年行われてきた。年末上位8人だけが出場できるエリート世界最強決定戦だ。優勝者には、古くはマッケンロー、ボルグ、最近ではフェデラー、ジョコビッチとトップ選手が名を連ねる。賞金総額も600万ドル(約6億3000万円)と破格だ。

 全米準優勝で、錦織は、出場権を争うレースポイントで6位に浮上。しかし、3675点の錦織に対し、圏外の9位のラオニッチが3425点。250点差と、いつ逆転されてもおかしくない点差だ。初出場を確定させるためにも、残り5大会で「できれば1勝したい」と、ツアー通算6勝目を狙う。

 つかの間の日本での滞在では「一番楽しみなのは食事」。特に「魚が好きなのでアユを食べたい。あと、ノドグロ(アカムツの別名)」。大好きな豚骨ラーメンも待っている。英気を養い、その先には、再び快挙達成が待っている。【吉松忠弘】