【ロンドン8日=吉松忠弘】超破格の好待遇で、世界5位の錦織圭(24=日清食品)が開幕戦で打倒アンディ・マリー(英国)に挑む。男子テニスの世界ツアー最終戦ATPツアー・ファイナルが今日9日に開幕する。年間上位8人だけが出場できる超エリート大会に初出場となった錦織は、超高級ホテルや正装スーツなど大統領なみの厚遇に驚きながらも、マリー戦(日本時間9日23時開始予定)の必勝を宣言した。

 ツアーの公式カラーである青に彩られたセンターコート。イタリアのアルマーニ、地元英国のハケット・ロンドンなど超高級ブランドのスーツを身にまとい、世界の超一流8人が勢ぞろい。ひときわ小柄な錦織は「まるで大統領になったような気分」と、超エリート待遇に驚きを隠せない。

 スーツは既製品だが、もちろん無償での提供だ。宿泊はロンドン議会の旧庁舎で、100年近い建造物を誇る1泊平均10万円ほどの超高級ホテル。窓からはロンドンの新名所となった観覧車「ロンドン・アイ」や、ビッグベンが一望できる。スーツ同様、宿泊代も選手は無料。世界で選ばれた8人だけが、至高のぜいたくを味わえる。

 ホテルと会場間の行き来は、ツアーの公式車となる高級車ベンツでの送り迎え。通常の大会でも用意はあるが、今大会は、選手1人に専属ドライバーが付く。加えてホテルと会場の間を結ぶテムズ川に、大会専用のプライベートフェリーが走る。行きはベンツで、帰りは豪華な川下りとしゃれ込んでもOKだ。

 会場の施設も芸が細かい。ロッカールームは、もちろん個室だが、部屋に入ると等身大の鏡には「Kei」の文字が浮かび上がる。提供される小物にも、ほとんど「Kei」の名前が入り「マスターズ(最終戦)に来たなって感じる。こういう特別感は、どこでも味わえない」。

 しかし、決して浮かれてはいない。元来、派手なことは苦手とする。「特別なことしかないので、何か気持ち悪い」。うれしい戸惑いも、コートに立てば気持ちを切り替え、1球入魂で戦う。「5試合、ベストな試合ができれば、すべて勝てるチャンスがある」と優勝も見据え、「自分を信じたい」と言う。

 まずは過去3戦全敗のマリーとの開幕戦に集中する。「守備がうまいタフな相手」。直近の対戦は13年が最後。今大会は5位の錦織、6位のマリーと過去とは立場が逆転している。「今年の自分は違う。最高の年を過ごしてきたし、トップ5の選手も倒した。彼に勝てない理由はない」。世界の錦織がまたひとつ、新たな歴史の扉をこじ開ける。

 ◆ATPワールドツアー・ファイナル

 70年に始まったツアー最終戦で、年間世界最強決定戦。年間成績の上位8人だけが出場資格を得られる超エリート大会で、賞金総額650万ドル(約7億4800万円)。無敗で優勝すれば、207万5000ドル(約2億3900万円)という破格の優勝賞金。最多優勝は6度のフェデラー(スイス)で、現在、ジョコビッチが2連覇中。70年の第1回大会は東京で開かれた。