<テニス:ATPツアー・ファイナル>◇1次リーグB組◇9日◇ロンドン◇男子シングルス

 世界5位の錦織圭(24=日清食品)が、アジア男子として初出場した「世界王者決定戦」の開幕戦で白星発進した。13年ウィンブルドン覇者で同6位のアンディ・マリー(27=英国)を6-4、6-4で破った。過去3戦全敗で1セットも奪えなかったマリーから4戦目で初勝利。各組上位2人が進出する準決勝(15日)に向けて前進した。

 錦織時代が、ついに幕を開けた。初出場で世界王者決定戦の開幕戦。マリーとは過去3戦全敗。大観衆すべてを敵に回した劣勢を、苦もなくはね返した。「勝ててうれしい。でも、目標は準決勝、決勝だ」。マリーのバックがアウトすると、錦織がガッツポーズで祝った。

 相手は、過去1セットも奪えなかったウィンブルドン覇者だ。しかし、この日は、まったく実力が逆転した。リードされてもあわてず。「第1セットは硬かったけど、第2セットはほぼ完璧だった」。95分で、マリーから初勝利だ。

 収容1万7800人がぎっしり埋まった。世界トップ8人だけが競い合う超豪華なテニスの祭典は、異様な雰囲気を醸し出す。その中で、地元マリーへの大声援を打ち破るように、錦織が初の大舞台で果敢に攻めた。試合前には「雰囲気にのみ込まれないようにしたい」と話していたが、まったく不安はなかった。

 第1セット、第5ゲームで自分のサーブを落とした。しかし、すぐに第6ゲームで破り返し3オール。お互いに、ミスが多かったが、ここから錦織がレベルを上げた。「途中から、どんどん自信が湧いてきた」。圧倒的なストレート勝ちだ。12年全豪で、自身初の4大大会ベスト8に進出した。期待を持って挑んだ準々決勝で対戦したのがマリーだった。センターコートの試合は、1セットも奪えず。わずか2時間12分で完敗した。当時、マリーは世界4位。世界のトップの厚い壁を実感した一戦だった。「いいプレーをしたけど、歯が立たなかった」。

 ジョコビッチやナダルとは違い、マリーとは似たようなプレースタイルだ。一発のパワーではなく、ストロークの展開力で勝負する。お互いに、ラリーが続くが、パワーで勝るマリーに最後は押し切られた。

 最後に戦ったのは、13年1月のブリスベーン。あの時から、約2年で、錦織は別人に生まれ変わった。「今年の自分はベストなシーズンを戦っている。今までとは違う」。対戦がなかった2年で、錦織はロンドン五輪金メダリスト、ウィンブルドン覇者を超えた。【吉松忠弘】

 ◆ATPワールドツアー・ファイナル

 70年に始まったツアー最終戦で、年間成績の上位8人だけが出場できる。賞金総額650万ドル(約7億4800万円)。無敗で優勝すれば207万5000ドル(約2億3900万円)の賞金を得る。最多優勝は6度のフェデラー(スイス)。12、13年はジョコビッチ(セルビア)が連覇した。<14年錦織の快挙>

 ◆世界ランク10位

 2月の全米室内と4月のバルセロナオープンを制し、5月のマドリードオープンで決勝進出。5月12日の世界ランクで12位から9位に浮上し、日本男子初の世界ランクトップ10入り。

 ◆4大大会初の決勝

 全米オープン準決勝で世界1位のジョコビッチ(セルビア)を破って日本人初の決勝進出。決勝ではチリッチ(クロアチア)に敗れた。

 ◆2週連続V

 9月のマレーシアオープン、10月の楽天ジャパンオープンと2週連続で優勝した。