男子テニスで世界5位の錦織圭(24=日清食品)が、自己最高の時速200キロ超えのサーブで4大大会初制覇に挑む。錦織が契約するウイルソンのラケットを開発販売するアメアスポーツジャパンが20日、都内で会見した。来季、錦織が新たなラケットで戦うことが発表された。錦織のリクエストで、打球スピードが平均約8%ほどアップする。これまでは最高でも時速190キロ台で、唯一の弱点とされたサーブに強力な武器が加わり、錦織のテニスが大きくパワーアップする。

 来季、目標に掲げた4大大会初制覇。その世界の頂点に向け、錦織に頼もしい武器が加わる。錦織がリクエストし、球速を平均で約8%ほどアップした新ラケットは錦織オリジナルだ。「もっと攻撃的に行くために、もう少しスピードがほしかった」。これで、課題のサーブも一気に武器と変わる。

 現在、錦織のサーブの最高速度は、時速195キロ前後。先週のツアー最終戦でも、最高速度は、1次リーグ最終試合のフェレール戦で記録した197キロ。4試合の平均最速は、約194キロだ。今年の年頭に「できれば200キロ台に乗せたい」と話していたが、なかなか、それが達成できない。

 サーブは、回転、コースを複雑に組み合わせることで、相手の読みを外せる。錦織も、これまで「人と違うことをしたい」と、七変化と呼ばれる球種と予測を外す頭脳で、遅い球速を補ってきた。決して球速だけではないが、4大大会優勝となると、スピードが出るに越したことはない。

 178センチと小柄な錦織にとって、エースの数を増やせれば、長くラリーを続ける必要がなく、短期決戦に持ち込める。4大大会は1回戦から決勝まで7試合。5セット試合で、体力を温存するためには、サーブでのエースが最も簡単だ。「プレースタイルを変えるための挑戦だと思っている」。

 同社のラケットを担当する商品部の谷泰仁さん(35)によると、「通常、新開発には2年を要する」という。しかし、錦織のさらなる飛躍を後押しするために、異例の半年で、新たな武器を作り上げた。フレームの内側に新素材のハイパフォーマンスカーボンファイバーを配した。これにより、ラケットを固定し機械でスイングさせるテストでは、錦織が今季まで使ったラケットより平均8%アップ。しかも、選手を使ってのテストでは、15%もアップしたという。

 新たな武器の名前は「BURN(燃えるという意味)」。195キロが8%アップなら、約211キロだ。210キロ超えなら、世界でも速いレベルだ。燃えるようなサーブでエースを量産し、錦織が世界へのトップへと駆け上がる。【吉松忠弘】