<バドミントン:全日本総合選手権>◇最終日◇7日◇東京・代々木第2体育館

 史上2番目の若さの女王が誕生した。昨年のヨネックスオープンで国際公式戦スーパーシリーズ最年少優勝を遂げた山口茜(17=勝山高)が、初優勝を飾った。2連覇を狙った三谷美菜津(23)を21-11、21-18のストレートで下した。17歳6カ月は、11年の奥原希望の16歳8カ月に次ぐ若さでの優勝で、女子高生としては4人目の女王となった。

 マイペースは、女王になっても変わらない。2度目のマッチポイントを決め優勝した瞬間でも、派手なガッツポーズ、かけ声、涙もなかった。一瞬、ベンチにいる小林監督の方をチラリと見ただけ。コート上でのインタビューで「うれしかった」と言うと、やっと笑顔を見せた。

 女子高生とは思えない冷静さで、6歳年上の三谷に快勝した。昨年、粘りで日本一に輝いた相手を敵にしながら、ほとんどミスがないプレーを披露。体勢が崩れても「相手のいないところを狙っている」と驚くコースに打ち分け、会場のどよめきを誘った。

 加えて、今大会は攻撃も絶好調だ。この日もスタートから速い展開でスマッシュを打ち込み「調子がいいから、ミスするまで打っちゃおう」と連打。「身長が小さいから相手が油断している」と謙遜しながらも、攻守の歯車がかみ合い、1回戦から全5試合にストレート勝ちし、初めて女王の座を奪った。

 高校1年の昨年9月、日本人初のヨネックスオープン制覇で「東京五輪の星」と一気に注目を浴びた。当時145位だった世界ランクは、最新で17位にまで上昇。2年後のリオ五輪も十分に狙える好位置だ。17日からは、今季国際ツアー最終戦スーパーシリーズファイナルに初めて挑む。

 しかし、そこはあくまでもマイペース。全日本女王の称号にも「普通の高校生なので、あまり似合わない」と苦笑い。それでも大きな銀の優勝杯を受け取ると「いろんな意味で重い」。少しだけ女王を実感した。

 3日前に、観客からアンパンマンの人形とお守りをもらった。「スポーツの神」として有名な亀戸香取神社のお守りだった。ラケットケースにしっかりとつけて決勝に挑んだ。五輪選手が詣でるので有名な「勝運」神社の御利益は、「普通の高校生」にほほ笑んだ。【吉松忠弘】

 ◆高校生女王

 60年大会の橘美智子、89年大会の宮村愛子、11年大会の奥原希望に次いで4人目。<山口茜(やまぐち・あかね)アラカルト>

 ◆生まれ

 1997年(平9)6月6日、福井県勝山市生まれ。

 ◆運動神経

 3歳で自転車の補助輪を外し、1日で乗りこなした運動神経の持ち主。5歳で本格的にバドミントンを始める。

 ◆文武両道

 今大会優勝のご褒美で願うのは「テストの免除」と言うが、勝山南部中では学年2位の学業成績で得意科目は国語。

 ◆ソースカツ丼

 福井のB級グルメといえばソースカツ丼。誕生日によく食べる。

 ◆バドミントンの町

 故郷の勝山市は人口約2万5000人。元全日本覇者を生むなど、バドミントンの町として知られる。

 ◆ジュニア世界女王

 13年決勝で大堀彩を破り、ジュニア世界選手権初優勝。今年は2連覇を達成した。

 ◆趣味

 小さい時に習ったピアノ。後は「周辺に遊びに行くところがない」ため、寝ること。

 ◆家族

 両親と兄2人の5人家族。

 ◆サイズ

 156センチ、55キロ。