<全国高校バスケット選抜優勝大会:明成71-69福岡大大濠>◇最終日◇29日◇男子決勝◇東京体育館

 明成(宮城)が福岡大大濠を逆転で破り、2年連続3度目の優勝を飾った。昨年と同じ相手で、今夏の高校総体で敗れた福岡大大濠を2点差で振り切った。U-17日本代表で198センチのセンター八村塁(2年)が、残り34秒で決勝点を挙げるなど計31得点を獲得。NBAと20年東京五輪出場を目指す16歳が存在感を示した。3位決定戦は市船橋(千葉)が桜丘(愛知)を97-84で退けた。

 最後は独り舞台だった。69-69で迎えた残り45秒。西アフリカ・ベナン人の父を持つ八村はブロックショットを決めボールを奪う。相手陣内に走り込むと残り34秒3、こぼれ球を押し込んだ。71-69と逆転。試合終了のブザーに、叫びながら喜びの涙を流した。

 開始3分で9点リードも、第2クオーター(Q)に逆転を許すと、逆に最大12点差をつけられた。昨年までなら焦りから強引に攻めて、空回りすることもあった。今年は周囲に声を掛け、チームメートへのサポートを徹底。耐えて流れを奪い返すと、要所でリバウンドを奪い、シュートを決めた。

 「この1年間、先生に迷惑を掛けた。恩返しをしたかった」。子どもの頃からのサボり癖はなかなか直らなかった。市仙台を含め5度の日本一を達成した佐藤久夫コーチから「集中力を切らすな」と何度も怒鳴られた。「自分のプレーより人のプレー」「自分のプレーはチームのため」と説かれてきた。その教えをピンチに生かした。佐藤コーチからは「苦しい時に声を出してチームを引っ張った」と心の成長を認められた。

 日本代表の長谷川健志監督は「すべてが素晴らしい。すぐにでも代表に入れたい」。そう絶賛された八村は「NBAに入って、その後は日本代表として米国に勝ちたい」と目を輝かせる。FIBA(国際連盟)から国際試合禁止処分を受けた日本だが、可能性を秘めた高校生はたくさんいる。【田口潤】