日本フェンシング協会は12日、16年リオデジャネイロ五輪、20年東京五輪に向けた「キックオフ会見」を都内で開いた。ロンドン五輪銀メダルの男子フルーレ団体だが、斉田守強化本部長は「厳しい状況」と危機感をあらわに。近年の世界大会で結果を残せず、このままならリオ五輪出場もできない状況にある。さらに五輪の団体戦は種目の持ち回りのため、東京五輪では男子フルーレが開催されない可能性も示唆した。

 新年のおめでたさとは裏腹に、斉田強化本部長の言葉は険しいものだった。「厳しい状況にある。あぐらをかいていられない」。08年北京五輪の個人で太田雄貴が銀メダル、12年ロンドン五輪は団体で銀メダル。世界一への階段を上っていると見られがちな男子フルーレ陣は、追い込まれていた。

 ロンドン五輪代表の千田は「チームも個人も波があって、一番高いところが前回の銀メダルだった」と分析する。太田が東京五輪の招致活動で約1年間競技を休んだ影響に、他国の成長も重なり、国際大会の成績が低迷。リオ五輪の出場圏外に甘んじている。

 出場権は16年4月30日付の世界ランク上位4チーム、5~16位までの各地域で最高位のチームに与えられ、計8チームで競われる。現時点では3位中国、5位韓国で、アジアで3番目の日本に出場権はない。昨年9月のアジア大会で40年ぶりの金メダルも獲得したが、斉田強化本部長は「要所で勝っているが、挑戦者です」と強調した。

 さらに、その先の見通しも厳しい。フルーレ、エペ、サーブルの男女6種目があるが、五輪での団体戦は4種目。慣例として持ち回り開催で、このままでは東京五輪では男子フルーレが外れる番となる。協会は水面下で国際連盟に働きかけているが、メダルの可能性が最も高い男子フルーレが外れれば大打撃となる。

 協会では今後、リオに向けた「500日合宿」で重点強化を図る方針。斉田強化本部長は「缶詰めにしないと」と打開策を模索する。残り1年半、再び波のピークを目指す剣士たちの戦いが続く。【阿部健吾】